精霊研究所にて、どんな暗闇をも照らす『ブルーキャンドル』の説明を受けたクレア達一行。
しかし、それと同時に、王立研究員のケイトが、今にも処刑されようとしている、という情報を得た。

彼女には、セイジ姉手救出の際に世話になった。
あの時ケイトは、こうなることを承知で、一行を逃がしたのだろう。


「ハーフエルフの罪人は、例外なく死罪だ」


いつか耳にしたその言葉が、クレアの脳裏に蘇った。


「ここが、闘技場…」


闘技場は元々、罪人と猛獣の戦いを観賞する為に作られた施設らしい。
リーガルによると、罪人を闘技場へ連行する為、ある通路から、監獄に繋がっているとのことだ。

ケイトはきっと、そこに軟禁されている。


「リーガル。頼むよ」

「無理はしないで下さいね?」

「ああ」


一行が練った作戦は、建物の構造を熟知しているリーガルが囮となり、監獄へと侵入すること。
危険な賭けではあるが、大人数で動くよりも、リスクは低いはずだ。

フード付きのマントやローブを身につけ、タイミングをずらして闘技場へと集う。
仲間だと気づかれないよう、一人から三人でグループを作り、各々の武器を磨いたり、読書に耽るふりをする。

そこへ、フードで顔を隠したリーガルが現れた。


「出場なさいますか?」


にっこり。

闘技場の受付嬢が、柔らかい笑みを浮かべる。
ひょこひょことそちらに向かいそうになったゼロスの頬を、小さな指が力一杯つねった。


「いででででで!痛いっつーの!…って、え…?クレアちゃん?」

「…あ。えと、その…」


てっきり、コレットもしくは、しいなの仕業だと思っていたのに。
ゼロスが目を丸くしていると、背後から怪訝な声が降り懸かった。


「神子、さま…?」


その女性は、訝しげにクレア達の様子を窺う。
このままではまずい、と、誰もが思ったその時だった。


「俺さまとハニーの仲だ。二人だけの秘密にしてくれる、よな…?」

「…み、神子さま…!」


フードの下から、端正な顔立ちが覗く。
耳元で甘く優しく囁けば、女性は顔を真っ赤に染め上げ、こくこくこく、と何度も何度も頷いた。

クレアは、更に深くフードを被り、ゼロス達の様子が見えないよう、そっぽを向いた。


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