空中庭園へ向かおうと、レザレノ・カンパニー本社に足を運んだクレア達一行。
しかし、どうも様子がおかしい。
ビルの両脇に控えているはずの警備員が、いなくなっているのだ。
それだけではない。ビル全体が、静まり返っている。
「おい、大丈夫か!」
「…エクスフィアブローカーの、ヴァーリが…中へ…」
壁には、血痕が飛び散っている。
命に別状がないといえど、ヴァーリの行為は許せるものではない。
リフィルとクレアが、怪我人の介抱を終えると、一行は屋上へと続くエレベーターに乗り込んだ。
「答えろ!トイズバレー鉱山の奥へ続くロックは、何がキーワードになってるんだ!」
「…知らぬ」
「てめぇ…!」
「…私が教えてやる」
リーガルの声を聞くや否や、ジョルジュに詰め寄っていたヴァーリの肩が、びくりと震えた。
それと対をなすように、ジョルジュの瞳には嬉しさが滲んでいる。
「…丁度いい。会長自らお出ましか」
「会長…?」
仲間達の視線を無視し、リーガルは続ける。
「私の声紋と網膜で開く。無理にこじ開ければ、エクスフィア鉱山部分は崩落するだろう」
「そうか。ならばリーガル、俺達に協力して扉を開けろ!エクスフィアが採掘出来なけりゃ、こちとら商売上がったりだ」
「断る。それにロディルは死んだ。お前の卸すエクスフィアを大量に買い取る者は、もういないのだ」
「バカが!ロディルさまが死んでも、俺には教皇さまという後ろ盾がある。エクスフィアの買い手ならいくらでもいるんだよ!」
エクスフィアは、人の命で出来ているというのに。
アスカード人間牧場での、悍ましい出来事が、耳を劈くような悲鳴が、クレアの脳裏に蘇る。
教皇は、それを理解しているのだろうか。
「黙りなさい。罪のない人を殺したあなたを、許す訳にはいきません」
プレセアだけではない。
クルシスの輝石を生み出す研究には、沢山の人間が関わっていたはず。
要の紋なしのエクスフィアは、身体に毒だ。
きっと、装着したその瞬間に命を落とした者も、少なくないだろう。
プレセアが斧の柄に手を伸ばしたその時、煙幕と共にくちなわが姿を現した。
「くちなわ!あんた、この男の仲間だったのかい!」
「いずれ国王は死に、教皇さまの栄華となる。その時はレザレノ・カンパニーなど握り潰してやる!」
しいなの問いに、くちなわは答えなかった。
だが、彼は教皇騎士団と行動を共にしていたのだ。
そしてその教皇は、ヴァーリの得意先。
くちなわは、教皇ともヴァーリと繋がっている。
そう考えて間違いないだろう。
煙幕が消えると、彼らの姿は掻き消えていた。
追うことは出来たかもしれないが、今はアリシアの願いを叶えることが先決だ。
「…大事ないか?ジョルジュ」
「…はい、リーガルさま」
そして、リーガルの素性を知る必要がある。
「おい…会長って、どういうことなんだ?」
「私はリーガル・ブライアン。陛下より公爵の地位を頂いた、レザレノ・カンパニーの会長だ。神子は…ご存知のようだが」
「前に王女の誕生パーティーで見かけたな」
「…じゃあ、アリシアの仇のブライアンって…」
そう、確かに今リーガルは『リーガル・ブライアン』だと名乗ったのだ。
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