「皆さん!ご無事でしたか!」
「ニールさん、ごめんなさい。ボク、勝手に抜け出して…」
「心配していたんですよ。無事ならいいんです」
どこへ行っていたのか、どうして抜け出したのかなど、野暮なことは詮索しない。
わざわざ言葉で伝えなくとも、表情を見ればある程度分かる。
「そうだ、ミトスに笛を返さないと…。あ!」
「…!壊れてる…」
「ご、ごめん!大切な物だったのに!」
「…ううん、大丈夫。笛が壊れてしまっても、姉さまの思い出が壊れてしまった訳じゃないから」
ミトスに手渡される、姉との思い出が詰まったという小さな笛。
やはり、不思議な力が宿っているのだろうか。
皆が抱いていた疑問を、リフィルが代表してミトスに投げた。
「ねぇ、ミトス。この笛には、何か特別な力でもあるの?」
「…さ、さあ?でも、姉さまが、遥か昔に絶滅してしまった木の実から作られた笛だと、言っていました」
「うーん。絶滅した木の実か…」
「ねぇロイド。ボータさんの伝言、ユアンに伝えないと」
ミトスをテセアラに返す為にも、それに必要なレアバードの空間転移装置が使えるかどうかを確認する為にも、一行はまず、レネゲードの基地へと向かわねばならない。
ボータの言葉を伝える、彼らの最期の願いを叶える為、クレア達一行はトリエット砂漠にある、シルヴァラントベースを目指す。
ニールによると、絶海牧場に収容されていた人々は、備え付けられていた船で無事、逃げおおせたらしい。
現在は、学校で保護されているとのことだ。
ロックされた扉の解除や、誘導の指揮をとったのはきっと、ボータ達レネゲードに違いない。
(…ありがとう)
届くかもしれない。
届かないかもしれない。
クレアは、胸の前で手を組み、最後まで信念を貫いた彼らに、祈りを捧げた。
*prev top next#