魔導炉を無効化させる為、官制室へと向かったクレア達一行。
近未来的な仕掛けを解除しながら、ロイド曰く「一番奥の部屋」を目指す。

今までの牧場の造りも、そうだったのだ。
ロイドの言葉に間違いはないだろう。


「生きておったか…。神子くずれとその仲間めが」

「ヴァーリと二人で…私を騙したんですね」

「プレセアか。お前がその小さい体で、クルシスの輝石を作り出してくれていれば、もっと大事にしてあげたのですがねぇ」

「…消えなさい!!」


たった一つの石に、人生のすべてを奪われた。
父を、妹を失い、故郷までもを失った。

彼女の時間は、戻らない。


「まあ、そういきりたたずに投影機を見なさい。これからちょっとした、水中ショーを見せよう」


水流音と共に投影機に映るのは、牧場に収容されていた人々。

煤けた衣服に痩けた頬。過酷な労働を強いられていた彼らに、体力はほとんど残っていない。
一行の活躍により解放された彼らは、真っ直ぐ出口へと向かっていた。

しかし、無情にも、彼らの足元に大量の海水が迫ってゆく。


「てめぇ!やめろ!今すぐ海水を止めるんだ!」

「お前達がここに乗り込んできた訳は、分かっていますよ。大方、我が魔導砲を無力化しようというのでしょう。…残念でしたねぇ。魔導砲へ続く通路は、海水で満たしてあげましたよ!」


ロディルは、そんなことの為に、沢山の命を犠牲にするのだろうか。
‘命’は、誰にとっても唯一無二のものだというのに。

種族や立場なんかは関係なく、すべてに平等に与えられる。


「あとは、クルシスの輝石があれば完成する。あのトールハンマーさえあれば、ユグドラシルもクルシスも、おそるるにたらんわい。目障りな救いの塔も、崩れ落ちるだろう」

「救いの塔を破壊して、いったい何になるんだ」

「くくく。お前達のような、下等生物には関係のない話だ。私はようやく、クルシスの輝石を手に入れたのだからな!…どれ。まずはわしが装備して、輝石の力を試してやるわい」


それはかつて、人の命だったもの。今は亡き誰かに寄生して、その生命を吸い取ってしまった石。

クルシスの輝石を装備したロディルは、人の形を成していなかった。

爛れた肌は剥き出しに、緑色の長い腕。
左右で非対称の赤いそれを、瞳と呼ぶことは出来ないだろう。


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