「でも、もしそうなったら、二つの世界は元に戻るんですか?」

「…それは分からんが、種子が消滅すれば、世界は滅びる」

「だから、マーテルさまには涙をのんで、消えてもらうってか」

「マーテルは既に死んでいるのだ。デリス・カーラーンの、マナがなければ、とうに心も消えていた」


だが、何故ユグドラシルはそこまでマーテルにこだわるのだろうか。
貴重なクルシスの輝石を使い、本来二つの世界に与えられるはずの膨大なマナを、全て捧げる…。
また、マーテルの器と称して、神子の身体を求めていた。

ユグドラシルにとって、マーテルという存在は…?


「今まで《大いなる実り》は、衰退世界の精霊によって守護されてきた。しかし、マナの楔は抜けはじめ《大いなる実り》の守りは、弱まっている」

「私達が、二つの世界の精霊と契約をしているから…ですね」

「なるほど、だから私達と手を組みたいのね。私達には、しいなという召喚士がいる」


恐らく、召喚士としての資格を持って生まれるものは少ないのだろう。
かつてリフィルが「召喚士は途絶えて久しい」と言った通りだ。


「ユアン、お前はクルシスか?…それとも、レネゲードなのか?」


ロイドの問いに、しばしの沈黙が流れる。
今まであやふやにしていた自身の立場を、公言するようなものだ。当然の反応だろう。
しかしユアンは、その切れ長の瞳で一行を捉え、口を開いた。


「…私は、クルシスであり、レネゲードの党首でもある。…さあ、どうするのだ?」

「…分かった」

「信じるの?ロイド」

「…信じるさ。こいつは、自分の裏切り者としての立場を明かした。それって、やばいことなんじゃないのか?」

「お前達は、ロディルの牧場へ向かうのだったな」

「ホントによく知ってるねぇ。こっちに密偵でも放ってるんじゃねぇのか」

「ホントだよな。…まあいいや。魔導砲ってのが完成する前に、どうにかしたいんだ」

「それに、ロディルには…貸しがあります」


力を得た代償として、失った時間。
この先も一生取り戻すことの出来ない、もの。


「牧場と魔導砲はシステムが連結しているはずだ。管制室を無効化するといい」

「やけに…詳しいわね」

「我々も、ロディルの牧場に潜入する必要がある。奴の牧場の入口まで道案内をするが、どうする?」

「どうするもこうするもねぇよ。手を組むんだろ。当然頼むさ」

「あんた達は何の為に牧場へ向かうんだい?」

「マナを《大いなる実り》に照射する為の準備だ。…ああ、その準備の為に、レアバードの空間転移装置が使えなくなっている。テセアラへ戻るのは、牧場潜入の後まで待て。いいな」

「分かった」

「準備が出来たらボータに声を掛けろ。…後は頼むぞ、ボータ」

「分かりましたぞ」














to be continued...

(10.12.27.)


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