「おまえ達を待っていた」

「おかしな話だな。我々がここに向かうことが予想出来たというのか?」

「さぁ、どうだろうな。それより我々と手を組まないか」

「…呆れたこと。ロイドやコレットを散々狙ってきて、ムシがいいとは思わなくて」

「あの時と今では状況が違う」


そう、一行を待ち構えていたのは、クルシスに対抗する地下組織、レネゲード。
ニール達が目撃したというのは、恐らく彼らのことだろう。
敵の目を欺く為に、レネゲードはディザイアンそっくりの格好をしているのだ。

一行ですら、その区別はつかない。

ただ、党首ユアンと、その右腕であるボータが姿を現したから、目前で構える彼らがレネゲードだと判別出来るのだ。


「大樹カーラーンを知っているか?」

「聖地カーラーンにあったっていう、伝説の大樹か?…無限にマナを生み出す、生命の木」

「しかし、古代カーラーン大戦によるマナの枯渇で枯れ、今では聖地カーラーンに、種子を残しているだけだ。我々はその種子を《大いなる実り》と呼んでいる。二つの世界を一つに戻す為には《大いなる実り》が必要不可欠だ」

「二つの世界を、一つに戻すだと!?」

「私はかつて言ったはずだ。ユグドラシルが、二つの世界を作ったと。元々、世界は一つだった。それをユグドラシルが、世界を二つに引き裂き、歪めた。そして、二つの世界は《大いなる実り》から滲み出る、僅かなマナを奪い合って、何とか存続しているのだ」

「だから、繁栄と衰退が繰り返されて、再生の神子が旅立つ…」


世界再生の旅は、マナの流れを逆転させる作業。
神子の身体を、否、すべてを捧げることによって成り立つ儀式。
マーテルの器となった神子に残されるものは、何一つない。

身体も、心も、記憶も、自分という存在さえも失う旅。
神子が犠牲になることで、世界は救われる。

そんな仕組みは、間違っている。


「しかし《大いなる実り》が発芽すれば、それも終わる。大樹が復活するのだからな」

「どうしたら、大樹が復活するんだ?」

「死滅しかけている《大いなる実り》を救う為に、純粋なるマナを大量に照射する。それには、クルシスの拠点であるデリス・カーラーンを使う。あれは、この大地の遥か上空につなぎ止めてある巨大なマナの塊で出来た彗星だ」

「それが本当なら、どうしてユグドラシルは、大樹を復活させないんだ!」


そのせいで、皆が苦しんでいるというのに。


「デリス・カーラーンの膨大なマナは、全てマーテルに捧げられている。輝石の力で《大いなる実り》に寄生し、心だけが生きながらえている彼女を復活させる為に」

「マーテルが目覚めれば《大いなる実り》は、彼女に吸収されて消滅するだろう。逆もまたしかり。それを阻止する為ユグドラシルは、マーテルが寄生した《大いなる実り》を、精霊の封印という楔で護っている」

「我々は《大いなる実り》を発芽させる。その結果、マーテルは種子に取り込まれ、消滅するだろう。そして…」

「大樹カーラーンが…復活する」


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