「…クルシスは、ほとんどがハーフエルフで構成された組織じゃ。わし以外のドワーフ達も大勢関わっておる。…彼らの目的は、ハーフエルフの千年王国設立と、マーテルさまの復活だ。その為にマーテル教を利用して、神子をマーテルさまの意識と融合させようとしている」
「でも、だったらどうしてディザイアンは神子の命を狙ったりするの？」
「エクスフィアやクルシスの輝石は、人の恐怖や悲しみ、そして闘争本能に刺激されて目覚めるのじゃ。だからディザイアンは衰退世界を荒らす。天使化促進の為、神子を危機に陥れる。…しかし、命までは奪わぬはずじゃ。殺意をもって襲ってきたというのは、ロディルのようにクルシスを裏切ったディザイアンか、あるいはレネゲードの連中じゃろう」
「ロディル…か。奴は何を企んでいるのだ」
「魔導砲の復活じゃよ。奴はどこからか魔導砲の図面を入手して、シルヴァラントに建設しているようじゃ。奴は牧場の主でもあるからな。収容されている者は皆、その建設にかり出されておるのだろう。あれが完成した時、奴は自分の帝国でも作るつもりなのじゃろうか」
《魔導砲》という単語は、耳にしたことがある。確か、ハイマのピエトロも同じことを言っていた。
しかし、彼が逃げ出したというのは、クヴァルの管轄にあるアスカード人間牧場。
クヴァルとロディル。二人の五聖刃は、裏で繋がっていたというのだろうか…？
「なあ、じゃあユグドラシルが二つの世界を作ったってのは本当かい？」
「さて、そのように聞いているな。けして混じり合わぬ二つの世界を四つのマナの楔で結び、その中心に大いなる実りを置いて護っているのだとか」
「…大いなる実り？どこかで聞いたような…」
「ミトスの英雄譚に出てきます。古代戦争終結後、聖地カーラーンで死んだミトスの魂をそう呼ぶとか」
ロイドの疑問に、ミトスが答える。
まだ時間を共にして間もないが、彼はとても博学だ。
テセアラのことのみならず、シルヴァラントのことまでを熟知している。
小さな頃から読書が好きだったとのたまった彼。これらは全て、本を通じて得た知識だという。
「…ちょっと待って。確かにそうだけど、どうしてこっちにもシルヴァラントと同じミトスの伝説が残ってるの？前から気になってたんだ。聖地カーラーンも救いの塔も二つあって、ミトスの伝説まで一緒なんて…」
「二つの世界は、二極から行き来が出来るそうじゃ。その二極というのがどこかは知らぬが、ミトスという人は、それを利用して二つの世界を行き来したのではないか？」
「…二極…。そうだったのね…。これは私の仮説よ。古代大戦とは、テセアラとシルヴァラントの争いではなかったのかしら。そして、それを勇者ミトスが停戦させたの。そう考えれば、二つの世界にミトスの伝説が残っていても不思議ではない。そして、その二極の一つは聖地カーラーンだとすれば、聖地が二つある意味も分かるわ。そこは二つの世界の扉なのよ」
「…なるほど。二極について様々な意見を聞いたが、あなたの説が一番輝いているように思えるな」
「他にはどんな意見があったのかしら」
「異界の扉…という伝説がアルタミラに伝わっている。それが二極だとする者もいるようだ」
「…異界の扉…」
言葉を咀嚼するかのように、リフィルは呟いた。
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