「セルシウスさまぁ〜!クールビューティー!」
「お黙り!あんたがセルシウスに見とれてたせいで、危うくクレアが怪我するところだったんだからね!反省しな!」
契約の間へとたどり着き、氷の精霊セルシウスとの契約を試みる一行だったが、当のセルシウスは姿を見せることなく戦闘に突入した。
精霊はその存在を分かりやすく具現化したもので、事実上‘姿’というものはない。
今回も少し離れた場所で戦闘を見守ろうと、踵を返した瞬間だった。
「セルシウスさま〜!」
視界の端に映るセルシウスの姿が、美しい女性を象っていたのだ。
「なっ、なにやってんだいアホ神子!」
「いや、口説けないんならせめてその麗しのお姿を堪能しよう思って」
女性に目のないゼロスは、こともあろうにクレアを背負ったまま、その場にしゃがみ込んだのだった。
――以上、回想終了。
「でもよー、俺さまきちんとクレアちゃんのこと守ったろ?」
「だからって…!もしものことが起きたらどうするつもりだったんだい!?」
「…もしものことなんか起こらせやしないって」
突如として真面目なものに急変したゼロスの表情を見て、しいなはため息をつく。
なんだってこの男は、こうも飄々としているのだろうか。
なにを考えているのか、なにを思っているのか、いまいちよく分からない。
まったく、クレアも面倒な男に惚れちまったもんだね…。
「…次はないと思っておきなよ。特に、コレットが黙っちゃいないだろつからね」
「でひゃひゃひゃひゃ!…そうだな」
戦闘後のコレットの表情を思い出し、ゼロスは思わず身震いする。
天使のような笑顔を浮かべているのに、彼女の周囲に禍々しいオーラが渦を巻いていたあの瞬間を、この先一生忘れないだろう。
to be continued...
(10.12.11.)
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