「グアアアアアッ!」


突如天から降り注いだ幾重もの光が飛竜の身体を貫き、焦がしてゆく。

二体の飛竜が絶命し、一際大きな飛竜の脳天に光の大剣が突き刺さった。


「なっ、何だ……!?」


何者かの攻撃で反撃の余地なく息絶えた飛竜達。

ロイドらが辺りを見回すと、ただならぬ様子で魔物達の最期を見つめる少女の姿があった。


「もう駄目……間に合わない!」


弱々しい声が耳に届く。

すると、コレットの足元で光を放っていた魔法陣が、巣一帯を覆うようにして広がった。


「我々を喰らおうとする、この禍禍しい光は……一体……!?」

「か……体が……動か、ないよ……!」


黄金色の光が、一行の動きを支配する。

巨大な重力が発生しているかのように、少しでも気を抜けば地面に吸い寄せられる。ロイドらは皆、平衡を崩さないようにするのが精一杯だった。


「……コレットだ!コレットの体内のマナが、ボク達の方に……逆流してきてるん、だよ!」

「コレットの下にある、魔法陣の影響、だわ……!」

「……コレット!そこから、逃げるんだ……!」


仲間達の言葉に、コレットは力無く首を振る。


「駄目……鎖で繋がれていて……動けないの…。ごめんね、みんな……。私、世界を救うことも、みんなを助けることも出来ない、中途半端な神子だったよね…。ロディルの言う通り……罪深い神子なのかも」

「……順序を取り違えたら、駄目です……!」


その声に、コレットは顔を上げる。

見れば、プレセアが斧を杖代わりに自身へと歩み寄っているではないか。


「……あなたは、悪く、ない。悪い、のは……」


少しずつ近付く彼女の頬に、腕に、足に傷が出来てゆく。


「駄目だよ、プレセア……!これ以上近付いたら……!」


ミントグリーンの瞳から大粒の涙が零れ落ちる。

魔法陣の影響が強くなっているのか、プレセアは苦しそうに眉を顰める。それでも彼女は、コレット目指して歩き続けた。


「…神子に、犠牲を強いる、仕組み……です!」


斧を振り下ろし、繋がれていた鎖を打ち砕く。

コレットは、自由になった両腕で小さな身体を受け止めた。


「プレセア!……ありがとう」

「おい、足場がやばいぞ!」


久しぶりの再会に感動する間もなく、飛竜の巣が崩壊してゆく。

ロイドの指示に従い、仲間達は各々のレアバードに跨がった。


「ロイド、私は……」


次々と飛び立つ仲間達を見遣り、コレットは戸惑っていた。

《自分は、皆と一緒に居てよいのか》と。

躊躇う少女に、少年は右手を差し出した。


「コレット!生きるんだ!」

「……う、うん!」


ロイドの腰に手を回し、レアバードに跨がった。

足場もほとんどなくなり、巣の中心を形成している樹木の根のようなものが剥き出しになる。

仲間達の後を追い、二人は大空へと飛び立った。


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