リーガルの案内で向かった鉱山は現在発掘作業を中止しているらしく、人影はなく代わりに機械だけが動いていた。

貴重な研究材料の浪費だと憤慨するリフィルを何とか宥め、無事に抑制鉱石を入手することが出来た一行は再びオゼットへと赴く。

村の広場に辿り着いた時、がくりと膝を折ったコレットがその場に崩れ落ちた。


「痛いっ…!く、ううっ!」

「コレット!?」


隣を歩いていたリフィルが抱き起こし、コレットの額に手を当て自身のそれと比べる。


「熱があるわ。でも、この痛がりようは…?」

「…どいて…」


応急処置として治癒術を施す為に意識を集中させると、小さな影が一行の前に現れた。


「私に…任せて下さい…」

「プレセア?え、ええ…」


見慣れた桃色が小さな身体に不釣り合いな巨斧を引きずり、少しずつコレットの元へ近付く。

皆の視線が集まる中、プレセアは突如一行に向けて斧を一閃させた。


「!」


慌てて攻撃範囲から飛び退いたクレア達の視線に映ったのは、気絶したコレットを無造作に抱えるプレセアの姿。


「プレセア…!?」


どうして、とクレアが唇を動かすより先に、太い幹の上から一行を眺める彼女の隣で時空が歪んだ。


「よくやった、プレセア」


そこから現れたのは、先刻プレセアと言葉を交わしていた赤眼鏡の人物。クレアの第六感が危険だと警報を鳴らした、ハーフエルフの男だった。


「我が名はロディル!ディザイアン五聖刃随一の知恵者よ!再生の神子は頂いて行きますぞ。ふぉっふぉっふぉっ!」


ロディルの高らかな笑い声が樹木に反響すると、頭上から強い風が吹き付ける。

葉を毟り枝をもぐその猛烈な勢いの中、現れたのは翼を持った巨大な竜。


(あれは、飛竜…!?)


しかし、現れた二体の飛竜はシルヴァラントの観光で使われているそれとまるで大きさが違った。

一体の飛竜がコレットの身体を鷲掴みにし、その背にロディルが乗る。

プレセアも、もう一体の飛竜に飛び乗った。


(コレット…!)


吹き荒れる暴風に足を取られないようにするのが精一杯で、魔術を詠唱することも剣で攻撃することも不可能だ。


「くそっ!コリン!」


しいなが胸元から取り出した符を掲げると、プレセアの頭上に人工精霊コリンが召喚され、高速で回転しながらプレセアの首筋を強打した。

小さく呻いて気絶したプレセアは、均衡を失って飛竜の背中から落下する。

それを見て真っ先に駆け出したリーガルが、地面に衝突する寸でのところで彼女を受け止めた。

その様子を横目で一瞥したロディルは唇に笑みを浮かべ、一際大きく羽ばたいた飛竜と共に彼方へと姿を消した。


「コレットーーー!!」


仲間の悲鳴と遠くから風に乗ってやってくる飛竜の羽音だけが、静かな村に響く――。














to be continued...

(10.08.06.)


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