「では、しいなには引き続きロイド殿の同行を命ずる。ただし今度は監視役ではなく連絡役だ。存分に働けよ」

「は、はい!」


タイガから下った新たな命に、しいなは緩んでしまった頬を引き締め慌てて姿勢を正す。

しかし、自分の感情に素直な彼女は、溢れんばかりの嬉しさを隠しきれてはいなかった。


「しかしタイガさんよ。そうすっと完全に王家と教会を敵に回すぜ?」


腕を組んだ体勢で土壁に背を預けているゼロスは、その蒼い瞳でタイガの漆黒を捉えた。


「では、神子さまにお尋ねしよう。二つの世界の片方を犠牲にする勢力と、二つの世界を生かそうとする勢力。神子さまならどちらに付かれる?」

「有利な方…と言いたいが、まあ普通は生かす方に力を貸してやりたいわな」


組んでいた腕を解き、先ほどの質問が愚問だと感じたゼロスに「そういうことです」と、タイガは告げる。


「当面我らはレアバードの発見に全力を尽くします。幸いしいながレアバードに式神を付けていたようですので、そちらから辿ればすぐに発見出来ましょう」

「分かりました。よろしくお願いします」


互いに一礼をした後、次々と部屋を後にする一行。

最後に残ったゼロスが扉を目前にしたその時、唯一死角になっているその場所で誰となく独りごちる。


「…本気、なのかねぇ」









「追っ手は森を離れたようだ。急ぐといい」


おろちの言葉に頷き合った一行は、一刻も早くアルテスタの元へ向かうべく、急いで村の出口へと向かう。

鳥居を象った木造のそれを潜ろうとした瞬間、ゼロスが声を上げた。


「ロイドくんよー。このおっさんにも戦わせたらどうよ」


そう言って彼が指差したのは、濃青の髪を風にたなびかせる捕虜の男。


「プレセアちゃんに用事があるんだろ、おっさんは。だったらチビちゃんから話が聞ける状態になるまで、俺達に危害は加えないんじゃないか?」

「そうね、悪くないアイデアだわ」

「胡散臭い気もするけど、まあ良いサ。あたしも最初は敵だったんだし」


ゼロスの提案に次々と賛成していく仲間達に対し反論の意を唱えようとするジーニアスだったが、ロイドの言葉によってそれは掻き消されてしまった。


「どうだ?一時的にでも俺達の味方として戦えるか?」


一行の視線を真っ直ぐに受け止め、男は拘束されている自身の両手に視線を落とした。

凛々しいという表現がぴったりと当て嵌まるような表情と声で、男は告げる。


「良かろう。我が名とこの手の戒めにかけて、けして裏切らぬと誓う」


新たな仲間が増えたことに歓喜するコレットとクレアの二人とは対照的に、ふて腐れてしまったジーニアスは男にだけ聞こえる声量でぼそりと呟く。


「少しでもおかしい素振りをしたら黒焦げにするからな」


ふ、と薄く微笑んだ男に駆け寄った二人の少女は同じ高さ、同じ間の取り方で彼に一礼する。


「これからよろしくお願いします。…えっと」

「…リーガルだ」


二人の少女は互いに顔を見合わせ、にこりと微笑む。

こうして一行は新たな仲間、リーガルを迎え入れたのだった。














to be continued...

(10.06.10.)


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