ガオラキアの森を抜けて少し歩くと見えて来る鳥居を象った木造の門を潜ったその時、青色の衣装に身を包んだ男がクレア達一行の前に立ちはだかった。


「しいな!外部の者を里に招き入れるとはどういうことだ!」

「ああ、処罰は覚悟の上サ。おろち、副頭領に伝えてくれ。シルヴァラントの仲間を連れて来たって」

「シルヴァラントの…。貴公らは衰退世界シルヴァラントの人間か」


しいなに「おろち」と呼ばれた男はくちなわと同じ額当て、黒い籠手を身につけており、どことなく醸し出す雰囲気も似ているような気がする。


「…分かった。しいな、お前は俺と来い。貴公らは頭領の家の前で待たれよ」









小さな集落といえどその敷地は広く、メルトキオやサイバックで目にしたものとはまた一風違った建物が建ち並んでいる。

どちらかと言えばシルヴァラントに近い緑豊かな景色を眺め、クレアは懐古に浸っていた。


(…皆、元気かな…)


路頭に迷っていた自身を快く受けて入れてくれた家族同然の存在、コレットの父フランクと祖母ファイドラ。

世界再生の旅に出てから一度も連絡を取っていないが、元気でやっているのだろうか。

のどかな風景はどこまでも続いており、葉の間から洩れる柔らかな陽射しにクレアは思わず目を細めた。


(このまますべてのマナがテセアラに注がれてしまったら、シルヴァラントは…)


大きく首を振り、悪い方向へ傾きかけた思考を無理矢理断ち切る。

それに気付いたコレットと視線がかち合うと、彼女はにこりと微笑んだ。


「おろちさんが言ってた場所、ここかな?」


一際大きな建物を目前にクレアが呟くと、直前までコレットが片腕で抱えていた捕虜の男が目を覚ます。

ゆっくりと上体を起こし辺りを見回せば、心配そうに覗き込む二人の少女が男の双眸に映った。


「あんたは俺達の捕虜だ。暴れたりするなよ」


彼女らの背後から声を上げたのは、赤色の少年。

目の前の少女らを人質になどという考えを巡らせでもしたならば、その腰に提げた双剣で切り掛かって来ることだろう。


「状況も分からないまま、やたらに暴れるような無粋者ではないつもりだが。…?」

「ファーストエイド」


男の首元に手を翳したクレアが小さく呪文を唱えると、柔らかな光が青く変色した患部を癒す。


「痛く…ないですか?」


心配そうに覗き込む栗色の少女を見、男は「大丈夫だ」と短く返す。

クレアがほっと胸を撫で下ろしたその時、しいなと共に報告に向かっていたおろちが一行の前に姿を現した。


「副頭領がお会いになるそうだ」


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