「ねぇ、コレット。声以外も元に戻った?ちゃんと感覚とかあるの?」


未だクラトス達が消え去った方向へ視線を送るコレットに、ジーニアスが早口で問い掛ける。

コレットは自身の頬を抓ったり両手を開いたり閉じたりしてそれを確かめたると、眩しいほどの笑顔を皆に向けた。


「うん、だいじょぶみたい!…心配かけてごめんね。すごく久しぶりにお腹も空いてきた気がするし」

「そうか!」


コレットがお腹を擦りながら照れ臭そうに微笑むと、ロイドも釣られて笑顔になる。

ふと、何かに気付いたコレットが自身の背に目を遣れば、ロイドの視線もそれを辿った。

そこから出現したのは、透き通るように美しい薄桃色の天使の羽。


「…羽は、まだ出るみたいだけど」

「そ、そうか…」

「う〜ん、やっぱり俺さまが見込んだ通り、コレットちゃんは笑ってると断然可愛いぜ〜♪」


少しだけ表情が曇った二人の間に割って入ったのは、にやにやという効果音がぴったりなぐらいの笑みを浮かべたゼロス。


「えっと、あなたは…ゼロスさん?」

「おお!俺さまのこと、ちゃんと覚えててくれたんだなぁ!同じ神子同士、仲良くしようぜ〜」


さりげなくコレットの肩へと伸ばされかけたその手を引き剥がしたのは近くに居たロイドでもなく、はたまたしいなの鉄拳でもなく、クレアの両手だった。

彼女の肩が小刻みに震えていることを見て取ったゼロスは、伸ばした手を引っ込めて大人しく後ろに下がる。


「…クレア」


コレットが名前を呼ぶと、クレアの足元に小さな染みが出来た。

深く俯いているせいで表情を読み取ることは不可能なのだが、ぽたぽたと地面に染み渡る透明な雫を見て、コレットは再度クレアに向かって呼び掛ける。


「…ふっ、…う…っく、…」


抱き着く形で手を伸ばし優しく背中を撫でてやれば、堰を切ったように溢れ出す涙と共に呟くような声が聞こえた。


「…なぁに?クレア」


それは、天使聴覚を持っているコレットにしか聞き取れないほど、小さなものだった。


「…ふぇ…、…っ」


一瞬の我慢だと自身に言い聞かせ、溢れ出る涙を袖口で拭って顔を上げる。

にも関わらず、コレットの顔を見るなりふにゃりと緩んでしまう涙腺。

嗚咽混じりでお世辞にも聞き取りやすいとは言えないだろうが、クレアは伝えたかった言葉を漸く、口にした。


「…おか、え…りっ!」

「…うん!ただいま!」


にこりと微笑み、温かな彼女の身体を優しく抱きしめた。














to be continued...

(10.04.13.)


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