「や、やめてっ!!」
逸らした瞳を恐る恐る声のした方向に凝らしてみると、無機質だったコレットの赤い瞳に理性の光が宿った。
プロネーマの手を払いのけて瞬きを一つすれば、優しいミントグリーンが姿を現す。
「これはロイドが私にくれた誕生日のプレゼントなんだから!」
強い眼差しにふわりと揺れるプラチナブロンドは、掛け替えのない仲間の姿。クレアにとって無二の親友である『コレット・ブルーネル』そのものだった。
「あれ?みんな…。どうしてそんなところに入ってるの?」
ふと、仲間達が捕われていることに気づいたコレットが小首を傾げる。
彼女が行う所作の一つ一つが、一言一言がとても懐かしく思えた。
「何ということか…。しかし所詮は粗悪品。長くは保つまい!さあ、とにかく来やれ!」
「…っ、離して!」
抵抗するコレットを無理矢理連れていこうとするプロネーマの腹部に、コレットの手の平から放たれた光の球が命中する。
天使術を応用したものなのだろうか、プロネーマの身体はいとも簡単に吹き飛び、山岳の一角へとその身を打ち付けた。
「わっ、ととっ、…きゃあ!」
攻撃の反動でバランスを崩したコレットは何とか体勢を立て直そうとするも、その努力も虚しく盛大な尻餅をついてしまう。
それと同時に、彼女の下敷きになっている装置からはぷすぷすという音と黒煙が立ち上っていた。
「ど、どうしよう〜!壊しちゃった〜!」
コレットが慌てて立ち上がると、一行を覆っていた檻のようなものが消失した。
天使化してしまう前から全く変わらないその姿に、仲間達からは温かな笑みがこぼれる。
「それでこそコレットだよね!」
「相変わらずねぇ…」
「悪夢が蘇るよ…」
オサ山道での悲劇を思い出したのだろう、しいなが額に手を宛てて苦い表情を浮かべる。
しかし、その口元は確かに弧を描いていた。
「コレット!」
ロイドが名前を呼ぶと、コレットは至極嬉しそうな表情を浮かべて彼の元へと駆け寄る。
何度も躓きそうになりながら、彼の腕の中に飛び込んだ。
「ロイド!あのね、プレゼントありがとう!嬉しかったんだけど、ホントに嬉しかったんだけど、あの時はどうにもならなくて…」
「良いよ、そんなの」
頬を赤く染めて語るコレットに、はにかむロイド。
しかし、久方ぶりの再会を喜び合う間もなく二人の注意を喚起するようにリフィルが声を張り上げた。
「二人とも!後ろ!」
二人が振り返った先には、怒りに眦を吊り上げたプロネーマ。
攻撃を受ける瞬間に盾で防御したのだろう、黄金色のそれには所々黒く焼け焦げた跡が残っていた。
「小癪な…!覚悟をし!」
ロイドは腰の双剣を引き抜き、コレットは背中からチャクラムを取り出す。
仲間達もそれに続き、各々の武器を構えた。
「丁度良い!二人まとめてここで決着をつけてやる!」
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