「ロイド!…皆!」

「…助けに、来てくれたのね」


先に戦闘を終えていたロイド達が、二人の自由を奪っていた手錠を外す。

すると、ジーニアスは大きな瞳いっぱいに涙を溜めて、リフィルは安堵の表情を浮かべて仲間達を向いた。


「当たり前だろ、仲間なんだから」


そう言ってにかっと笑えば、ジーニアスはぱあっと顔を輝かせる。

しかし、ふと何かに気付いたのだろうか、彼の顔からは段々と笑みが消えてゆく。

ロイドから外した視線は地面に向き、そのまま俯いてしまった。


「…でも、ボク達…ハーフエルフ、なんだよ…?」


近くにいるロイドにさえ聞こえるか聞こえないかぐらいの声でそう呟くと、刹那の沈黙が流れた。

ふわり、ジーニアスの頭に乗せられた赤色が彼の頭をくしゃりと撫でる。


「それがどうした?」

「…ロイドっ!」


勢いよく顔を上げたジーニアスの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。

ロイドならきっとそう言ってくれるだろう、心のどこかでそう期待していた。

彼は…ロイドは、いつだって望む言葉を、態度をくれるから。


「…あたしも、ミズホの民っていうちょっと毛色の変わった一族サ。あんた達と変わらないよ」

「…正直、全く平気って訳でもないが、俺さまも天使の血を引くとか言われてるしな。ま、お互い様さ」

「私は…帰りたいだけ」


セイジ姉弟を真っ直ぐ見据えたしいなが口を開くと、彼女の後ろからやって来たテセアラ組も、拒むことなく二人を迎え入れた。


「そう…分かったわ」


表情にこそ出さないものの、安堵の色が窺える声でリフィルはそう呟いた。


「…あら?」


まだ少し跡の残る手首に治癒術をかけ、自身と同じく怪我を負っているであろう弟の姿を探すと、見慣れた二人がそこに居ない。


「…あの子達は?」

「…えっと、その…」


リフィルの問いに、ゼロスは視線を泳がす。言葉を濁してなかなか話を切り出さない彼の代わりに、プレセアが口を開いた。


「…倒れて…しまいました…」

「…どういう、ことかしら?」


プレセアの表情からはそれが深刻であるのかどうかが読み取れず、大人しく彼女の指差す方向に顔を向ける。

天使の羽をしまってその場に立ち尽くすコレットが抱えているのは、ぐったりした様子のクレア。

心配そうに顔を覗き込む者や申し訳なさそうに輪の外から一人見守る者、皆が皆慌てて彼女らの元へ駆け寄った。


「…チャージ」


リフィルが短く呪文を唱えると、翳した手の平から出現した温かなマナがクレアの身体に注がれる。

苦しげだった呼吸が、規則正しいそれに変わった。


「…もう、馬鹿な子ね…」


幸せそうに眠るクレアの前髪を至極優しい手つきで梳き、リフィルはそう呟く。

どこか親子のような雰囲気を漂わせる二人の姿を見、皆は顔を見合わせて微笑んだ。














to be continued...

(10.04.03.)


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