「おっし!こんなもんで良いかな」


あれから一行は場所を移し、現在は王立研究院の一室にて時を過ごしていた。

しかし、そこに居るのは額の汗を拭うロイドと、満面の笑みを浮かべたクレアのみ。

他の仲間達はというと、別室にて待機中なのだった。


「クレアちゃん達遅いな〜。…まっ、まさか二人きりなのを良いことに、あーんなことやこーんなことを…!」

「あんたと一緒にしないでよね!ロイドがそんなことする訳ないでしょ!」

「分かんねぇぜ〜?ロイドくんだって男の子だからな〜。でひゃひゃ!」


ぎゃあぎゃあ喚く男二人を尻目に、深い溜め息を漏らすリフィル。その隣では、プレセアが生気のない瞳で壁を見つめて続けていた。









「じゃあ私、皆を呼んで来るね!」

「ああ、頼む」


床に寝転んで目を閉じれば、ぱたぱたと廊下を渡るクレアの足音だけが聞こえた。

隣にも研究室があるはずなのだが、神子の連れということで気を遣っているのだろうか。作業中、足音一つ聞こえることはなかった。


「…コレット…」


ロイドが眺めているそれは、彼女が世界再生を担って旅立つあの日、プレゼントするはずだったペンダントを土台に作製された、要の紋だった。


「…待ってろコレット、必ず元に戻してやるからな!」


確固たる思いを言葉に勢いよく立ち上がると、とある人物の顔が脳裏に思い浮かんだ。


「…。あいつに…お礼、言わねぇとな…」


要の紋が入手出来たのも、作業部屋を借りることが出来たのも、全てゼロスのお陰だった。何かと女性陣にちょっかいを出す軽い奴だが、今回ばかりは礼を述べなければならないだろう。

ロイドは瞼を閉じて気持ちを落ち着かせる。深呼吸を一つして、閉じたそれをゆっくり開けると、視界一杯に紅が広がっていた。


「あいつ、ってもしかして俺さま?ロイドくん」

「…うわあっ!お、お前いつの間に!」


大きな鳶色の瞳を真ん丸に見開き、要の紋をポケットに捩じ込んで距離をとるロイドを、ゼロスは何やら裏がありそうな含み笑いを浮かべて注視する。


「…なっ、何だよ」

「別に〜?ロイドくんはコレットちゃんのことが好きなんだなー、って認識しただけ」

「コレットは大切な仲間だ、そんなの当たり前だろ」


ロイドは、至極優しい手つきでポケットの上からそれを撫でた。


「じゃあ、クレアちゃんのことは?」

「…は?」

「ロイドくんにとって、クレアちゃんは特別なのかって聞いてんの」


ゼロスは自身の紅髪を一房摘み、くるくると弄びながらロイドに問うた。


「特別も何も、」

「私がどうかしたの?」


いつの間にやら彼らの間にしゃがみ込んで会話を聞いていた当人の登場に、二人の表情が強張った。

しかしそれは一瞬のことで、ゼロスの肩を掴んだロイドは「何でもないぜ?」と上擦った声で返答する。

そうだろゼロス、と必死に相槌を求めるも、返って来たのはとんでもない嘘八百。


「そうそう。ロイドくんはクレアちゃんのスリーサイぐふっ!」

「…ゼロス、今度やったら承知しないわよ」

「だからって杖で殴るこたないでしょうよ、リフィルさま〜!」


お得意の猫撫で声で泣き付けば、リフィルは鬱陶しいと言わん許りに彼をあしらった。


「すりー…?」


その後ろで頭上に幾つもの疑問符を浮かべながら、うんうんと唸り続けるクレアだった。


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