コレットを治療する方法を求め、一行はエクスフィア研究に余念が無いという王立研究院に向かうこととなった。王立研究院が設立されている街は《サイバック》と言う名称で、海を隔てた先にある。
ゼロスの案内で大陸と大陸を繋ぐ巨大な跳ね橋、グランテセアラブリッジへと辿り着いた。


「すげー!でっかい橋だなー!」

「本当だ…!対岸がまるで見えないよ!」


ロイドを筆頭に、巨大な橋を目の当たりにした子供達が燥ぎ出す。中央で跳ね上げる形に設計されているそれは、ゼロスの説明によると対岸に辿り着くまで途方もない距離があるらしい。
渡りきるまでにどのくらいの時間が掛かるのだろうか、一人呑気にそんなことを考えていると、きらりと光る何かが目に留まった。


「聞いて驚け、田舎者。こいつの制御には、三千個のエクスフィアが使われてるんだぜ」

「三、千個…」

「三千人分の…命、か」


自慢げに橋を紹介するゼロスの言葉で燥いでいた子供らは動きを止め、暗い表情で俯いた。クレアは服の上から胸元のエクスフィアに優しく触れる。
仲間達の反応に戸惑いを隠せないゼロスは、自身の一番近くに居るロイドにその理由を尋ねた。









「…ハードな話だな。それ、マジもんなのか?」

「こんな嘘、つくかよ」

「………」


流石のゼロスも眉間に皺を寄せ、真剣な面持ちになる。彼は話を聞いている途中、時折自身のエクスフィアに触れ、どこか憂いを帯びたような表情で光り輝くそれを優しく撫でていた。
一方のプレセアは顔色一つ変わっておらず、話を聞いていたのかさえ分からない。


「…まあ、そうはいっても今更死んだ人が生き返る訳でナシ。人間、ポジティブに生きようぜ〜」

「……?」


ロイドの背中を力任せにバシバシと叩くゼロスに対し、セイジ姉弟は半ば飽きれて溜息をついた。明るく振る舞うその表情に、ほんの一瞬だけ暗い影が見えた気がするのは…ただの杞憂だろうか。


「そう言えば、お前やプレセアもエクスフィアを装備してるけど、こっちでは当たり前なのか?」

「いや?これはレネゲードって奴らから貰ったんだ。しいなとか教皇騎士団とか、結構な人数分わけてもらったはずだぜ」


…あれ?エクスフィアを『貰った』ってことは、ゼロスが装備してるのはクルシスの輝石じゃないんだ。シルヴァラントと同じで、どこかの教会に安置されているのかな?
クレアは隣のコレットを一瞥し、未だロイドと戯れあっているゼロスに今一度視線を向ける。


(…。…ゼロスも、コレットみたいに特別扱いされてたのかな…?)


おちゃらけてはいるものの、彼だって『神子』なのだ。きっと、自身の幼馴染みのように特別視されていたに違いない。でも、今はそれを聞く気にはならなかった。まだ「触れてはいけない」と、そう感じたから…。


(…いつか、ね…)


耳を澄ませば規則的なさざ波が聞こえてくる。遥か遠く、見えることのない対岸をしっかりと見据え、一歩を踏み出した。


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