プレセアの協力により潜入に成功した一行。広い城内を探索し、やっとのことで王の寝室を見つけ出す。大きな扉の前、武器を手にした騎士が一行に問うた。


「お前達。誰の許しを得てここへ来たのだ?」

「教皇さまのご命令ですわ」


間髪入れずにリフィルが述べる。彼女は優雅な所作で一礼をしてみせた。


「教皇さまの?ちょっと待て。今、聞いて…」

「悪い!」


背を向けた騎士に当て身を喰らわせ、気絶させる。強引な方法ではあるが、この機会を逃せば直接国王と面会出来ることはないだろう。
次々と仲間達が入室する中、最後尾を歩いていたクレアは倒れている騎士に手を翳し、治癒術を唱え始めた。


(…急にごめんなさい、騎士さん…)


優しいロイドのことだ、相手を傷付けるほどの力は込めていないと思うが、念の為。クレアが自身の心に意識を集中させると、淡い光が騎士の身体を包み込んだ。









重々しい扉を開ければ、豪奢な内装と数人が話し合っている様子が視界に入った。中央に安置されている天蓋付きのベッドに腰掛ける男性が、国王だろう。だが、顔から血の気が引いてしまっている。
その様子を心配そうに伺うのが、華美なドレスを身に纏った女性。


(…お姫さまかな?…凄く、綺麗…)


「何事だ!」


そして一行を見るなり真っ先に声を上げたのは、数人居る祭司の中でも位の高そうな男性。先程騎士が呼んでいた『教皇』だろう。身に纏っている衣装や装飾品を見れば、教会関係の人間だと推測するのは容易である。


「…あれ?」

「あっ!天使…さま…」


祭司の怒号に反応し、一行を振り返る紅い髪。神子ゼロスの姿を捉えるとクレアはロイドの背に隠れた。先程の出来事を思い出しているのだろう、みるみるうちに頬が赤く染まっていった。


「どうしたんだよ、クレア?」

「………」


ロイドの服をぎゅっと握り締め、火照った顔で怖々とゼロスを見上げる。クレアの奇妙な行動に疑問を抱いた教皇がゼロスに問い掛ける。


「神子、知り合いですかな?」

「知り合いっつーか、なんつーか…」


神子の豪遊振り、女癖の悪さがが知れていると言っても、流石に場が悪い。
「ちょっかいを出しました」などと言える訳がなく、ゼロスは言葉を濁した。


『…神子ぉ!?』

「あなたが…テセアラのマナの神子だったのね」


刹那の沈黙の後にロイドとジーニアス、二人の声が綺麗に重なった。その反応を見たゼロスが、僅かに目を細めて言う。


「テセアラの…とは引っ掛かる言い方じゃねぇか」

「まさか…お前達はシルヴァラントの人間か!」


目を見開いて問う教皇にロイドが頷くと、王女は持っていた扇で口許を隠した。美しい顔からは血の気が引き、力が抜けていくのが分かる。
彼女がよろめくと、近くにいたゼロスがそれを支えた。


(…。…何か、嫌だ…)


ちくり、胸の辺りが痛み始める。そっと手を翳してみるが傷跡などない。この辺りを負傷したことはないし、持病を患っている訳でもない…。
治まる気配のないそれが苦痛で、二人から目を逸らした。


(…あ…。痛みがなくなった…)


「姫、ご心配なく」


そう言ってゼロスが柔らかく微笑むと、王女の頬が赤く染まる。一行ではない誰かからの視線を感じたのか、彼は慌ててロイドに向き直る。


「ええっと、お前の名前は?」

「ロイドだ」

「ロイドくん。何の目的でここに来たのかな」


ゼロスに訊かれ、ロイドはズボンのポケットに手を入れた。きっと手紙を渡すんだ、そう思ってロイドの背から離れた。


「この手紙を届けに来た。ミズホの民しいなから国王宛てだ」


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