わわわ私、今…み、耳かぷって…。か、噛まれたよ…?私の天使さまは…あんな軽い人じゃないもん!もっと誠実な人…だ、もん…うぅっ。


「ふ…コレットぉ…」

「…クレアー!」


コレットに縋り付こうとした時、聞き覚えのある声が私の名前を呼んだ。声のした方向を振り向くと、赤色。ロイド達が手を振りながら階段を駈け登って来る。慌てて涙を拭い、手を振り返した。


「…よかった。二人共無事だったんだな」

「うん。コレットが…助けてくれたの」


「ありがとう」心の中でコレットに感謝の意を示す。今のコレットには届かないと分かっていても、そうしたかったんだ。
改めて仲間達を見回すとロイドにジーニアス、リフィル先生に…あれ?しいなは?私が首を傾げると、リフィル先生が口を開いた。


「しいなはコレットの暗殺失敗を報告に向かったわ。代わりに、彼女から手紙を預かっているの。今までの経緯と、コレットを治す為の協力を願い出てくれたのよ」

「これを王さまに渡すんだ」


そう言ってロイドが取り出したのは三つ折りの手紙。確かにしいなの字で国王へ宛てられていた。


「…また、会えるよね?」

「ああ!きっと会える。協力してくれたしいなの分まで、頑張ろうぜ!」

「…うんっ!」


再会した仲間達と共に城門へ向かうが、王さまは病気を患っているらしく「謁見の儀は執り行われていない」と門番に軽くあしらわれてしまった。


「そんな!困るんだよ、それじゃあ!」

「そう言われても、陛下のご病気が治らなければどうにもなるまい。一刻も早く陛下が快復なさるよう、教会の祭司にでも頼みなさい」

「…しょうがねぇな。教会に行ってみるか」


教会は王城に隣接して建っていた。シルヴァラントとは比べ物にならないほど豪勢なその造りに、思わず目を見張る。教会の外装に描かれている美しい天使の姿を見、ユアンの言葉を思い出した。


(…マーテルさま…)


重々しい扉を開けると奥に控えていた祭司が声を上げ、柔らかい笑みで一行を迎える。クレアが扉を閉めようとした時、一人の少女と目が合った。


「プレセアか。祈祷は陛下の寝所で行う予定だ。神木は城へ運んでくれ」

「…はい」


祭司がプレセアと呼んだ少女は桃色の髪を二つに結わえ、虚ろな瞳で頷いた。

袖のない灰色のワンピースに、頑丈そうなグローブ。腰には小さなポシェットと一振りの短剣をさしている。しかし最も一行の目を引いたのは、小柄な身体に酷く不釣り合いな巨大な斧と、それで伐採したのであろう一本の丸太。台に乗せられてはいるが、どこを見ても車輪のようなものはついていない。


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