一行は時折やって来る追っ手をうまく撒きながら基地の中を奔走していた。不意にジーニアスが誰となく尋ねる。その間も、走る速度は緩めない。


「ねぇ、これからどうするの?」

「…何とかしてコレットを助けよう。マーテルの器にされちまったらコレットが死んじまう」

「でも、どうしたらいいのさ?」


ジーニアスの問いにロイドは俯く。一刻も早くコレットを助けたいという気持ちはあるが、具体的な方法が思い付かないのだ。それはクレアも同じだった。すると、リフィルが隣を走るしいなに声を掛ける。


「…しいな。あなたのエクスフィアはどこで手に入れたものなの?」

「な、何だよ、急に…。これは…こっちに来る時王立研究院でつけられたんだよ」


恐らくエクスフィアが装着されているのであろう左胸の下に手を添えて、しいなは答えた。再度、リフィルからの質問が投げ掛けられる。


「テセアラではエクスフィアを装備するのが当たり前なのかしら?」

「そんなことはないよ。元々はレネゲードからもたらされた技術なんだ。それを研究して、今じゃ機械にエクスフィアを取り付けたりするのが一般的だよ」


リフィルは顎に手を当て思案を巡らす。目前に迫っていた角を曲がると不意にロイドが走るのを止め、仲間を振り返った。


「ちょっと待て。じゃあテセアラとレネゲードは仲間なのか?」

「仲間…かどうかは知らないよ。ただ二つの世界の仕組みについて、情報をもたらしたのはレネゲードだったんだ。神子の暗殺計画も、奴らの提案だよ。あいつらが陛下と教皇に吹き込んだんだ。テセアラの繁栄を望むなら、シルヴァラントの神子を殺せって」

「…!」


クレアはコレットを繋いでいる手に力を込めた。
自分が幸せになる為なら相手を殺しても構わないだなんて、そんなの酷いよ…!
下唇を噛み締めたクレアを一瞥し、リフィルがロイドに向き直る。


「私はテセアラへ行くことを提案するわね。エクスフィアの研究をしているテセアラなら、クルシスの輝石についても何か分かるかもしれないわ」

「確か王立研究院では、テセアラの神子が持っているクルシスの輝石を研究していたはずだよ」

「テセアラにもマナの神子がいるの?」


クレアはしいなに問う。天災などで全滅しないよう親類は離れた土地で暮らすのが習わしとされてきた為、当然ながらコレット以外のマナの血族との面会はない。テセアラにもマナの神子がいると聞き、何故かは分からないが懐かしさを感じた。


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