兵士に案内され、彼らのリーダーが待つという部屋に通された。部屋にはボータと若い男がいた。男は空のように蒼い髪を一つに結っており、長いマントを翻してこちらを振り返る。


「漸く目覚めたか」

「お前らが…レネゲードなのか?」


ロイドの問いに、男は腕組みをして軽く頷く。その際、纏っている軽鎧がかちゃりと音を立てた。


「我々はディザイアンに…いや、クルシスに対抗する為の地下組織だ」

「じゃあ、クルシスとディザイアンは…本当に同じ組織なのか!」

「その通りだ。クルシスは表ではマーテル教を操り、裏ではディザイアンを統べている。ディザイアンは、クルシスの下位組織なのだ」


クレアの、否、一行の僅かな願いは掻き消され、表情が曇る。それらを気にする様子もなく、ボータの言葉に男が続いた。


「マーテル教は、クルシスが世界を支配する為に生み出した方便に過ぎない。天使と名乗ってはいるが、奴らはクルシスの輝石という特殊なエクスフィアを用いて進化したハーフエルフなのだ」

「あいつらも…ハーフエルフなのかい!?」

「ディザイアンの一部もクルシスも、そして我々もハーフエルフだ」


クルシスとディザイアンは繋がっていると断言された今でも、心のどこかでそんなことある訳がない、と考える私がいる。それに、今まで祈りを捧げてきた天使さまが「実はハーフエルフだ」なんて言われても、すぐに信じられる訳がないよ…。


「…クルシスは何が目的なんだ?世界を支配する為だけにこんなことをしているのか?」

「全て我々に聞くつもりか?少しは自分の頭を使ったらどうだ」


男がわざとらしく肩を竦め、うんざりだという態度で答えると、熱り立つロイドを宥めながらリフィルが一歩、進み出た。


「女神マーテルの復活かしら?マナの血族に神託を下し、婚姻を管理して器となる神子を作り上げている。かなりまだるっこしいやり方なのが気になるけれど」


どうやらリフィルの意見は正鵠を射たらしい。ボータは感心したような表現を浮かべ、男は面白そうに目を細めた。


「シルヴァラントには、互いにマナを搾取し合うもう一つの世界がある」

「テセアラだな」

「そう。そしてこの歪な二つの世界を作り上げたのが、クルシスの指導者ユグドラシルだ」


男が言うと仲間達は皆、目を瞠る。唯一、心を失っているコレットが反応することはなかったが。珍しくジーニアスが声を荒げ、男に意見する。


「世界を作る?馬鹿馬鹿しい!そんなこと出来る訳ないよ!」

「そう思うのならここでこの話は終わりだ」


そう言って男はマントを翻し、扉へ向かう。それをロイドが呼び止めた。


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