…ごめんね、コレット。約束、守れなかった…。私が神子に選ばれていれば今頃、コレットはマナの血族として幸せに暮らしていたのに。私が世界再生の旅に出て、封印を解放して、天使になっていれば…結果は違った?
「くっ、神子は既に天使化してしまったか!やむを得ん。殺さず連れ帰るのだ!」
目の前には大きな背中。いつか対峙したディザイアン――ボータだった。彼に続くように転送装置からやって来た部下達が倒れている仲間達を支え、再び転送装置へと姿を消して行く。しかしそれをユグドラシルが許すはずもなく、攻撃の手を彼らに向けた。
「…っ、フィールドバリアー!」
クレアが声を限りに叫ぶと、彼らを覆うようにして透明な防御壁が出現した。ユグドラシルが瞠目した隙を突き、クレアは宙に浮かぶコレット目掛けて跳躍する。コレットの左手を無理矢理掴み、全速力で駆け出した。
(…あと、少しっ…!)
コレットとクレアが転送装置に足を乗せる寸前、背後からマナの気配を感じた。クレアが半回転してコレットを庇うように立ちはだかると濃密なマナの塊が目前まで迫っていた。
その時、強い力で身体を押されコレットと共に転送装置に尻餅をついた。薄れゆく景色の中、最後に見たのは――
「…小賢しいレネゲードが。まあ良い。退くぞ、クラトス」
「御意…」
ユグドラシルの姿が消えたのを見計らい、クラトスは立ち上がり呟いた。鋭い眼光の先には、クレア達が乗った転送装置。
「レネゲードに助けられたか。…死ぬなよ、ロイド」
「ここは…?」
「クレア、やっと目が覚めたんだね!」
心配そうに私の顔を覗き込むジーニアス。瞼を擦り上半身を起こすと、自分がベッドの上にいることが分かった。左手に残る僅かな温かさに、救いの塔での出来事が蘇る。
「…コレットは!?」
辺りを見回すと、無機質な赤い瞳で壁を見つめるコレットがいた。ベッドから飛び降りてコレットの元へ駆け寄る。彼女の両手を掬い取り、ゆっくりと瞳を閉じた。
『声』が、全く聞こえない…。
「…結局心を失ったままだよ。何を言っても反応しないんだ」
「…そんなっ…」
「クレア、ここを覚えていて?ここはトリエット砂漠なの。ほら、以前あなた達が敵に捕まってしまった、あの基地よ」
リフィルの言葉にクレアはコレットの手を離し、ロイドと共に記憶を辿る。二人共記憶力が良い方ではないが、どうやら先に思い出したらしいロイドが「ああ!」と声を上げた。
「…ディザイアンの基地か!」
「ここの連中は…ディザイアンじゃないんだよ」
「は?突然何を言ってるんだ?」
しいなの発言にロイドとクレアは首を傾げる。ディザイアンじゃ、ない?一体、どういうこと…?
「いっぺんに色々あったから、混乱しちゃうよね。ボクもそうだもん…」
「そうね。ちょっと長くなるけれど、ざっと今の状況を整理してみましょうか」
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