TRIO!! | ナノ
1年の校舎に着くと、矢野くんは既に自分の教室から出てきていた。
「せんぱいっ!」
「遅れてごめんねっ!」
「全然! 俺も今教室から出たとこなんで」
そう言ってきらきら笑顔を見せた矢野くん。
ぐわああ眩しい! はるちゃんの邪気がこもったソレとは大違いじゃねえか。
「うそつけー! 先生が出ていった瞬間、教室出ていったくせにー!」
「う、わっばかっ! 言うなよ!」
教室内から、矢野くんのクラスメイトがそう言ってきた。
「え、うそ。 なら尚更ごめんね!」
「あ、もう全然気にしないでください!
俺待つのキライじゃないんで!」
うわっガチ犬じゃん。 ぐうかわ。
「そ、それより! 弁当!」
「あ! そうだったね! ごめんね、お腹すいたでしょ」
「はい! もう腹ぺこりむしです!」
「腹ぺこりむし?」
「はっ! いや、その、俺が考えたんじゃないんですよ!
クラスの女子が言ってたのを真似てるだけですよ!」
腹ぺこりむしって・・・
そして必死な言い訳・・・
何この子犬ちゃんたら・・・
「惚れてまうやろー!」
「え?」
「ん? あぁ、こっちの話よ気にしないで」
だめだ。
この子と長居していたら、わたしは思ってること全てぶちまけてしまう。
「あ、じゃあこれ、
どれぐらい食べるか分からないから、少し多めに作ったけど・・・
多過ぎたら残していいからね」
じゃあ、
といって矢野くんの教室を後にする。
つもりだったのに。
「せんぱいが作ってきてくれたのに、残すわけないですよ・・・
ってか、一緒に食べますよ」
わたしの腕を掴んで、いつもみたいなふわふわ笑顔じゃない真剣な面持ちで、言われたもんだから、びっくりして声が出なかった。
「はい、じゃあ行きますよー」
「あ、はい」
いつもよりも強引な矢野くんに、ただただ黙ってついていくしかなかった。
あ、
はるちゃんと翔忘れてた。
・・・ま、いっか!
腹ぺこりむしくんのギャップ
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