TRIO!! | ナノ

「うま子、わたし明日はマーくんと食べるから。」


キノコヘアーをふわふわ揺らしながら、キノちゃんこと葉山柚姫ちゃんが言った今日の昼休みのこと。
あ、ちなみにマーくんはキノちゃんの彼氏の田中将大くん。
同姓同名だけど、野球はしてないよ!バスケしてるからね!

はあー、
彼氏うらやましいなー!
キノちゃんは変顔とか下ネタでゲラゲラ笑う中なのに、しっかり田中くんの前では女の子してるんだろなー!
わたしなんて翔とはるちゃんのせいでこんなっ・・・!

あ・・・


「そうだ、この際弁当作ってあげよう!」


ちょっとまだ素を見てない疑問系美少年くん改め、矢野くんに女子女子するの付き合ってもらおうではないか!

と、いうことで。


「矢野って男子いる?」


1年の校舎に乗り込み矢野くんを呼び出してるなう。
わたしは後輩にもビビる残念なチキンガールだから、我が心の友、キノちゃんに呼び出してもらった。
キノちゃん・・・好きよ・・・!


「え、あ、はい。いますよ
矢野ー!2年の女の先輩ー!」


2年女子二人組が1年の校舎来て、しかも男子呼び出すとか何のこっちゃ。って顔した矢野くんのクラスメイトが、動揺しつつ矢野くんを呼んでくれた。


「あ、先輩!どうしたんですか?」


いつもの可愛い顔で首かしげてきた矢野くん。
キノちゃんがぼそっと美少年って言った。さすが心の友。
そしてキノちゃんが女の先輩二人組と1年男子という矢野くんにとって気まずいであろう状況を察して、少し離れたところに行った。ナイスキノコ!


「あ、あのね、明日弁当作ってくるよ。
それでさ、弁当のおかず何が・・・」
「本当ですか?やったー!」


わたしの言葉を遮って、彼は子犬のように喜んだ。
と、ここまではよかった。


「ああ、弁当のおかずは何が」


言い終わる前に、視界が暗くなり、きゅっと圧迫される感じと生暖かい温もりを感じた。
え?まさか?

抱き締められてる?!

はるちゃんと翔で免疫ついてると思っていたのに、かなり動揺している自分がいる。
てかキノちゃんびっくりしてるよ。きっと君のクラスメイトもびっくりしてるよ!


「ちょちょちょちょちょ!
矢野くん離れて!離れてください!」
「えーすごく嬉しいです!
俺唐揚げとプチトマト食べたいです!」
「矢野くん!わかったから!
お姉さん恥ずかしくて寿命縮んじゃう!」
「あー!先輩初めて俺のこと名前で呼んでくれたー!」


一向に人の話を聞かないな。
もはやはるちゃんと翔と同じような気がする。
てか抱き締めながらぶんぶん揺らさないでおくれ。


「せんぱい!」


高ぶった気持ちがだいぶ落ち着いたのか、相変わらず抱き締められたままだが、取り敢えずぶんぶん揺らすことをやめてくれた矢野くん。

なんだよ、もう。
お姉さん肉体的にも精神的にもだいぶ疲れちゃったよ。


「明日楽しみにしてますねッ!」


若干気落ちしていると、はいでましたよキラキラスマイル。
からの、急に離れて教室に戻っていくパティーン。
このパティーンは、絶対にあの純真無垢なスマイルとハグした温もり植え付けて、嵐のように去っていくことでその余韻を残して、お姉さんをときめかせる作戦だよ。


「あの子すげえ。天然たらし。」


キノちゃんがぽつりと呟いた。

ああ、矢野くん怖い。



弁当とハグと笑顔とそれから



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