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青城に勝ちました。
「なまえ」
「ん、国見?」
「ちょっといい?」
「あー…、っと…」
「いいよ、なまえちゃん。片付けも終わってるし、行っておいで」
「…すみません、清水先輩」
「気にしないで。私は先に行ってるから、その荷物だけよろしくね」
「はい、ありがとうございます」
「…ごめん、なまえ。邪魔して」
「平気よ。で、何?私の事?それとも、影山の事?」
「……両方」
「両方ねえ」
「なまえ、なんで男バレでマネージャーやってるの?やらないって言ってたくせに」
「さあ、なんでかしらね…強いて言うなら、先輩に流されたっていうか?」
「そんな可愛い性格じゃないでしょ、なまえは」
「失礼ね」
「…影山が…」
「ん?」
「……、……影山、は、王様やめたわけ?」
「気になる?」
「別に…」
「ふうん?」
「……少しだけ、な」
「あら、珍しく素直」
「うるさい」
「ふふ…そうねえ。独り善がりな王様は、ちゃんと卒業したのよ。翔陽のおかげでね」
「あの小さいの?」
「そ、あの小さいの。面白いでしょ、あの子」
「…そうだな」
「翔陽はね、足りないものも多いけど、他の誰にも無いものをたくさん持ってるの。確かにバレー選手としては異色だけど…それを活かすことを、影山は烏野で学んだ」
「…あの影山が、ねえ」
「びっくりでしょ?自分本意のプレーしか出来なかったアイツが、人に合わせることを覚えたのよ」
「中学での影山からは、想像もつかないな」
「私もそうだった。けど……想像しなかっただけ、なのかもね」
「…それ、どういう…」
「さて、私そろそろ行かないと。先輩に悪いし。アンタも一年なんだから、あんまり長いこと抜けたら怒られるわよ」
「……なんか…なまえも、変わったな」
「え、私?どこら辺が?」
「なんとなく」
「ふふ、何よそれ」
「別に。詳しく知りたかった?」
「んー、少しだけね。私のどこが変わったか、もし分かったら、教えてね」
「…ああ」
「それじゃあ、私もう行くわね」
「なまえ」
「ん?」
「……また、メールする」
「ん。私も」
「……それじゃあ」
「ん、またね、国見」
国見と話しました。
「なあ、国見」
「なに?」
「影山、本当に変わったよな」
「…そうだな」
「俺達には、出来なかったのにな」
「……なまえも」
「ん?」
「なまえも、変わったよな」
「なまえ…?そうか?あいつはいつも通りだったと思うけど」
「……はあ」
「えっ、なんで溜め息!?」
俺には、彼女の笑顔が、あの頃よりも輝いて見えたんだ。