15.最強セキュリティブラザーズ







「っのバカ飛段、いい加減にしろよな!うん!!」
「毎日毎日うぜーってばよ!」
「ナマエが嫌がってんのわかんねーのかよ?めんどくせー奴…」


今日も今日とて、飛段のセクハラは止まない。
それに比例して、私を庇ってくれる皆の怒声も止まない。
ていうか日に日に悪化している気がする。


「ナマエ、大丈夫?」
「サクラあぁぁ……全然だいじょばない…私、もうこの人無理…許容範囲越えすぎ……」


どれだけ無視しても、どれだけ怒っても、どれだけ皆の鉄拳を喰らっても、執拗に絡んできて一向に諦める気配がない。
寧ろなんかそれすら喜んでて気持ち悪い。
もう無理、こわい、限界。私にはもう耐えられない…!


「……仕方ない…こうなったらもう、あれしかない……!」
「!!まさかナマエ、あれを…!?」
「は、早まるなってばよ!」
「おいおい、んなめんどくせー事すんだったら、俺らが…」






最終兵器!忍法、口寄せの術!







「助けて!!イタチ兄さん!!」


魔法の呪文を唱えれぱ、どこからともなく……否、廊下から、此方へ疾走する足音が二つ聞こえた。






「どうしたナマエ誰に何をされた!?」
「だから兄貴じゃなく俺を呼べって言ってるだろナマエ!!」


教室の扉を叩き割る勢いで入ってきたのは、イタチ兄とサスケの二人。
そう、私の最終兵器とは、幼馴染み、うちは兄弟である。
イタチ兄は私にやたらと過保護なので、ヘルプを出せばいつでもどこでもどんな状況でも大概駆け付けてくれる。
サスケもやたらと過保護なので、自分じゃなくイタチ兄に頼られるのが気に入らないらしい。呼んでないのに来る。
なんで二人とも私の声がいつでもどこでも聞こえるのかは全く分からないけど。もしや盗聴機でも仕掛けられてるんだろうか。
しかし、かれこれ五、六年ぐらい封印してたのに、まだ使えた。
彼らの過保護っぷりは相変わらずのようだ。


「はあ……めんどくせぇ」
「あーあ、来ちまったってば…」
「な、なんだこいつら!?うん!?」


小学生から一緒の木ノ葉メンバーは、かつてから日常茶飯事だったため全く動じない。というか既に呆れ果てている。
しかし中学や高校から入った外部メンバーにとっては初めての(異様な)光景なので、驚きの声がそこかしこから上がっていた。




「なんだぁ、イタチじゃねーかぁ!」
「ん…?飛段、貴様まだこんなところにいたのか」
「おいナマエ、平気か?何があった?」
「……あのね、サスケ、イタチ兄…この人がセクハラしてくるんだけど、どうしよう」
「なん……だと……?」
「ナマエに、セクハラ……?」


ぴしり、一瞬にして空気が凍りつく。
冷気すら漂いそうな二人の温度が、更に一瞬にして飛段へと向けられた。


「てめーか俺のナマエに手ぇ出したのは!!ああ゛!?」
「ナンセンスだ飛段。お前が馬鹿なのは知っていたがここまで馬鹿だったとはな。さすが22歳にもなって高校一年生をしているだけの事はある。六年目ともなると遂に更なる劣悪化を引き起こすのだな。ナンセンスな奴め。しかしよもやナマエにセクハラするとは貴様余程命を捨てたいらしいな良いだろう望み通り殺す」


飛段の胸ぐらを絞め上げながらガン飛ばしまくるサスケと、飛段の頭を潰す勢いで掴むイタチ兄。
何故か嬉しそうな顔で悲鳴を上げる飛段に二人の制裁が下るけど、助けてなんかやらない。
こってり絞られて反省すればいい。
ていうか、飛段って22歳だったんだ。
一年生六年目なんだ。


「相変わらずすげー饒舌…」
「つーか弟の方、既にヤクザじゃねーか、うん」
「イタチ兄もサスケも、怒るとすっごく怖いからねぇ」
「それを簡単に口寄せしちゃうナマエも、充分恐ろしい子だと思うけどね」
「やだサクラってば、私は至って普通なの!」


私に過保護過ぎるあの二人がおかしいだけなの。
ドヤァって感じでそう言うと、周りから苦笑で返された。何故。






「ナマエ、もう大丈夫だ。兄さん達はこれを処分しに行ってくる。いい子にして待ってるんだぞ?」
「あ、うん。わかった」
「いいかナマエ、もし次に何かあったら、兄貴じゃなくて俺を呼べよ!わかったな?」
「はぁい。二人とも、ホントありがとうね」


イタチ兄とサスケはそれぞれに私の頭を撫でると、ほぼ原形を留めていない飛段(だと思う)を引き摺ってどこかへ行った。

かくして、私の平穏が帰ってきたのであった。








最強セキュリティブラザーズ


(ゲハハ!おいナマエ今日もいい乳してんなァ!!)
(ぎゃっ!?あんた昨日の今日でなんでそんな元気なの!?)
(俺ぁ不死身だからな!)
(意味わかんない寄るなバカー!!)