14.三組トリオと変態

※下ネタあり






「あ、教科書忘れた」


朝、教室についてすぐのこと。
一限目で使う数学の教科書が、どこを探しても見付からない。
鞄に入れっぱなしてたつもりだったんだけど…多分、昨日シカマルと勉強した時に、図書室に忘れてきたみたいだ。
仕方無く他のクラスの友達に教科書を借りるため、私は隣の三組へとやってきた。


「ヒナタ、おはよー」
「あ、おはよう、ナマエちゃん」


席に座っているヒナタに声を掛ければ、ふわりと可愛らしい笑顔が向けられる。
うん、いつ見ても癒される。天使か。


「おっ、ナマエじゃねーか!」
「おはよう、ナマエ」
「おはよ、キバ、シノ」
「ナマエがこっち来んの珍しいな。俺に会いに来てくれたのか!」
「違いますー、キバじゃなくてヒナタに会いに来たんですー」


隣のシノの席で屯っていたシノとキバに小さく手を振る。
この三人も初等部からの付き合いで、中でもヒナタは同じクラスになる事が多く、サクラやいのと同じく私の親友である。


「ヒナタ、悪いんだけど、数学の教科書貸して貰える?」
「うん、いいよ。ちょっと待っててね」
「ありがとーヒナタ!助かります!」
「教科書ぐらい、俺が貸してやんのによー」
「えー、キバに借りると見返り大きそうだからやだ…」
「なんだよそれ!?」
「確かに、それは有り得る。何故なら、キバなら教科書を貸す代わりにキスさせろ、くらいは言いそうだからだ」
「あ、それいいな!そうしようぜナマエ!」
「しません!ちょっとシノ、余計なこと言わないでよ。キバはそういうの悪乗りするんだから」
「悪乗りじゃねーよ本気だ!」
「尚悪いわ!」


キバの襲撃を避けながらシノの背に隠れると、盾にするなと不満の声が落ちてくる。
シノのせいなんだから、少しくらい協力してよ!


「ナマエちゃん、はい、教科書」
「ありがとヒナター!お礼に購買のプリン買ってあげるね!」
「え、いいよ、気にしなくても…」
「私がお礼したいの!だから今日一緒にお昼食べよ?」
「う…うん、ありがとう」
「じゃあ俺も一緒に食う!」
「えー、キバはいいよ」
「…購買の特選ババロアでも買ってやろうと思ったんだけどなあ…」
「キバ様是非お昼ご一緒しましょう!」
「安いなナマエ」
「うるさいよシノ。じゃあシノは一緒に食べないんだ?」
「……仲間外れは良くない。何故なら、「じゃあ四限目終わったらこっち来るね!」
「うん、分かった」
「なら中庭で食おうぜ!先に購買寄ってプリンとババロア買っといてやるからよ」
「本当?ありがとキバ」
「……」


あ、シノが拗ねた。
ごめんねシノ、冗談だよ。シノも一緒にお昼食べよ。
くいくいと裾を引きながらご機嫌を取り、なんとか斜めから真っ直ぐにと戻った。


「じゃあ私、そろそろ教室戻「見つけたぜぇナマエ!!」…!?」


教室戻るね、と手を振り掛けたところで、あまり聞きたくない声が聞こえた。
空耳だと思いたかったが他の皆も反応してしまったため、私もそちらを振り向かざるを得なくなった。


「…飛段…」
「あ?誰だコイツ?」
「確かナマエのクラスメイトだ。何故なら、以前シカマル達が言っていた。かなり面倒な奴だとな」
「って、シカマルは大体の事めんどくさがるだろ…」
「ったくよー、探したぜぇ、ナマエ!荷物は置いてんのに教室にいねーんだもんなぁ」
「だからって、わざわざ他のクラスまで探して来なくてもいいんじゃない?」
「何言ってんだ、探すに決まってんだろぉ?俺がわざわざ毎日学校に来てんのはお前に会うためなんだぜぇ!」
「私は寧ろ飛段の居ない学校生活を求めてるんだけどなあ…」


あ、めんどくさそう。一連の流れを見たキバがそう呟く。
そして、飛段から隠すように私の前に立ちはだかった。


「あ?なんだてめー?」
「そりゃこっちのセリフだ。ナマエが嫌がってんのにつけ回してんじゃねーよ」
「はあ?別につけ回してねーよ」
「つけ回してんだろーが!つーかお前あれだろ、二組の留年成人男だろ!」
「そーだけどなんで知ってんだぁ?まさか俺って有名人!?」
「悪い意味でな!」


何こいつ本当バカ。
悪い意味でと言っているのに何故か大喜びする飛段。
さすが俺すげー、とか言いながら一人ご満悦になり、自画自賛の独り言を繰り広げる。
そしていつの間にかその独り言の内容は、私の胸の話へと変わっていた。
……ん?いやいや、ちょっと待て。


「クラスだけじゃなく学年の女子もだいたい見たけどよぉ、やっぱナマエの乳がでかくて一番…」
「ちょっ、ななな何言ってんのバカ!!」
「あ?だからナマエの巨乳が「だからやめてええええ!!」
「ふざけんな!なんでテメーがナマエの乳を語ってんだよ殺すぞ!!」
「ナマエにセクハラとは、許せんな」


飛段の発言に、キバだけでなくシノまでが一歩前に出て臨戦態勢になってしまった。
ギリギリ手を出す事だけは抑えさせるも、口論は止まない。
更にヒートアップする口喧嘩は、何故か私の胸の話を中心に展開されている。
周りの生徒まで注目してるしああもう無理やめてほんとやめてえええええ!!




「あ、あのっ、キバくん、シノくん、落ち着いて!ナマエちゃんが可哀想だよ…」
「ひ、ヒナタあぁ…!」


天使か!!
唯一まともな気遣いをしてくれるヒナタ。天使。寧ろ女神。
ヒナタ教を布教しようと本気で思った。
聖母ヒナタ様。うん、いける。
下らないことを考えながらヒナタに抱き付く。
必然的に隠してくれてたキバの背中から抜け出してしまった。
すると、目敏くそれを見付けた飛段が此方に顔を向けて、そうするともちろん、私だけでなくヒナタにも目がいく訳で。


「お、ナマエより巨乳」
「!?」


しまった…飛段って巨乳好きだった!
どうしよう、ヒナタには近付けないようにしなくちゃと思ってたのに、すっかり失念してた…!


「だっ、駄目だからね!?ヒナタを変な目で見たら、許さないんだから!!」
「はあ?」
「…飛段は巨乳好きか」


ヒナタをキバの後ろに押し込み、今度はヒナタを飛段から隠す。
その意味が分かっていないキバは首を傾げながらも背中を貸してくれて、すぐに理解したらしいシノはぽつりと呟いた。


「えっと、ナマエちゃん…?」
「いいから、ヒナタは隠れて!大丈夫、絶対に私が変態から守って、」
「フッ…ゲハハハハァ!!甘いなナマエ!!」
「え?」


ヒナタを庇う私に、飛段は突然高笑いを繰り出す。こわい。
そして自信満々に、拳を握りながら声高に宣言した。






「ただでかけりゃいいってもんじゃねーんだよ!!乳だけじゃなくてスタイルや顔まで好みじゃねーと、俺ぁタつもんもタたね「死ね!!」ゲハァ!!」


こうして私は初めて自らの手で飛段に鉄拳を喰らわせ、飛段は騒ぎを聞き付けてやってきた大層ご立腹のサクラに引き摺られどこかに連れていかれた。










三組トリオと変態

(あ、おかえりサクラ。飛段は?)
(ゴミ捨て場に投げてきた)