13.IQ200の面倒臭がり







「ねえシカマル、ここ分かんないんだけど…」
「ん?そこは二次関数の応用だろ」
「…ってことは?」
「これをここに代入。あとここも同じだけど、公式間違ってんぞ」
「え、うそ…あ、ホントだ」


五月の連休も明けて数日が経ち、平日の雰囲気が戻ってきた放課後。
私は図書室でシカマルに数学を教わっていた。
めんどくせーとか言いつつも付き合ってくれるシカマルは、なんだかんだ優しい。
シカマルって、頭も良いし、顔も格好良い方だと思うし、これでもうちょっとやる気を見せればモテるだろうに。
まあ、そこを「めんどくせー」の一言で全て蹴っ飛ばすのが、シカマルのアイデンティティーみたいなものなんだけど。


「しかし、ゴールデンウィーク終わってすぐだってのに、よくやるよな」
「だって、来週の体育祭終わったらすぐテスト週間入るでしょ?一週間で勉強出来る気しないもん」
「何言ってんだ、お前フツーに勉強出来んだろ」
「シカマルこそ何言ってるの、私そんなに頭良くないよ?」


問題を進めながら、半分にシカマルと雑談する。
確かに文系教科は得意だけど、理系教科…特に数学はさっぱりだ。
単純な数式ならともかく、グラフや二次関数の文章題は完全に暗号である。
中学の時に解らなすぎて放置してたら赤点を取って痛い目を見たので、それに懲りてからはこうして暇がある時にシカマルに教えてもらっている。
シカマルは大して勉強してないくせに、テストの成績はいつも学年トップクラス。
この間もアスマ先生が、試しにシカマルにIQテストをさせてみたら、200という数字が叩き出されたと言っていた。有り得ない。




「…シカマルって、なんか勿体無いよね」
「は?何だよ急に」
「いや、なんていうか…素材は良いのに、中身に欲が感じられないっていうか…」
「なんだそりゃ」
「ううん、つまりね、もうちょっとやる気出せば、サスケとまではいかなくともモテるんじゃないの?って思って」


サスケのあれは最早どこのアイドルかって程の規格外だけれども、シカマルだって普通にモテると思う。
本人にやる気がないから出来ない人に見られるだけで、ちょっとやる気を出せば何でも出来る人なんだからさ。


「せっかくカッコイイところたくさんあるのに、皆が知らないのは勿体無いよ」
「っ…何言ってんだか…」
「だって、友達のいいところは皆に知って欲しいんだもん」
「…いらねーよ、別に」
「えー、なんでよ…って、あれ?もしかして照れてる?」
「うるせえ」
「あ、やっぱり照れてる」
「うるせっつの!んなこたどーでもいいから、さっさと問題解けって」
「ふふ、はあい」


少し声を大きくして誤魔化すシカマル。
照れ隠しなのか顔を背けながらノートを示すシカマルが可愛くて、私はその後もシカマルにちょっかいをかけ続け、その度に顔を赤くするシカマルに怒られるのだった。










IQ200の面倒臭がり


(…俺がそうやって思われてーのは、お前だけだっつーの…)