03.三日目







「ラーイライライライライ」
「あっ、居た居た、ライナー!」
「ライラ…おう、ナマエ!」


木々の中に、目当ての蝉を見付けて駆け寄る。
私に気付いた彼も、羽を広げて此方へ向かい飛んできた。




「おはよー」
「おはよう、今日は随分早いな?」
「うん、朝の散歩。私の日課なの」



近くの木に留まった彼と、他愛も無い話を交わす。
笑い声の混じるその会話はまるで馴染みの友のようで、昨日初めて話した二人だとは思えぬ雰囲気だった。









「ライナーって、ずっとこの辺に居たの?」
「いや、生まれたのはもっと山奥の森だ。一昨日、蛹から孵って、それからここまで来たんだ」



一昨日…という事は、私が初めて彼を見た日だ。
丁度あの日に、彼は成虫になったのか。
なんかちょっと、運命的なものを感じちゃう。…なんちゃって。




「ナマエは、どうしてここに?」
「私、訓練兵なの。この近くの訓練所で、兵士になるための訓練をしてるのよ」
「兵士?」
「そう、兵士。私、憲兵団に入りたいから」



訓練を終えると憲兵団、駐屯兵団、調査兵団の何れかに配属されるんだけど、内地で王に仕える憲兵団には、訓練成績が上位10位以内でないと入れないの。

兵団や訓練について話すと、ライナーは興味深そうに私の話に耳を傾けた。




「ナマエはどうして憲兵団に入りたいんだ?」
「私は……父が、憲兵団に居るの。だから、同じところに行きたくて」



女の子が父親の背中追いかけるなんて、変だよねえ。
軽く自嘲して笑うと、ライナーは真剣な目で、そんな事はないと言った。




「男でも女でも、親を尊敬して同じ仕事がしたいと思うのは、変な事じゃない。寧ろ誇れる事だ」
「そ…そう、かな…?」
「ああ。だからもっと自信を持って良いと思うぞ」




そんな事を言われると思っていなくて、少しだけ面食らう。
けれど、そう微笑む彼を見ると嬉しくなって、私も微笑み返した。
















love for a week 3/7



(今まで誰にも言わなかった事をあっさり話した自分自身にも、内心少し驚いていた)