02.二日目
私は次の日も、あの場所へ向かっていた。
前日会った、ライナーそっくりの蝉……彼に、もう一度会うために。
昨日は近付いたら逃げられてしまって、話が出来なかったから。
だから今日こそは、ちゃんと彼と話をしたいのだ。
そもそも蝉が人間と話せるのかと言う事が先ず疑問だが、人間(というかライナー)の顔をして人間(というかライナー)の声で鳴くのだから、きっと喋ることだって出来るだろう。
……と、思う。なんとなく。
あの時と同じ場所まで来て、じっと耳を澄ませる。
蝉達の声をひとつひとつ聴いて、あの異質な鳴き声を探した。
…イ……ライ…
……ライ……ライ…
「ラーイライライ」
「……居た!」
声のする方を、目を凝らして探す。
木の枝の一本一本から、隅々までを探して、一本の木の幹にようやく彼の姿を捉えた。
「あ、あの!」
「!!」
思い切って声を掛けると、彼の鳴き声が止まった。
もしかして、また逃げられちゃう…!?
「ま、待ってライナー!!」
「…!?」
彼が羽ばたこうとした瞬間、思わずライナー、と彼によく似た想い人の名を呼んだ。
いくら似てるからって何言ってるんだ私、と思ったけれど、何故か彼は羽の動きを止めて横目に私を見た。
「あ……あのっ、私、貴方と話がしたくて、それで…!」
「………名前」
「え…?」
「…俺の、名前……どうして知ってる?」
しゃ、しゃしゃしゃしゃシャベッタアアアアアアア…!!
彼と話がしたい、と思っていたものの、本当に蝉が喋るのを目の前にすると、やはり驚愕してしまう。
問われた内容もちゃんと理解しないまま、無言で彼と見詰め合って、数十秒。
漸く口を開いて、震える声で彼に言葉を返した。
「あ、貴方と、仲良くなりたいの!!」
love for a week 2/7
(一瞬だけ目を見開いて驚いた彼は、すぐに私を見て微笑んでくれた)