09.マネージャーのお仕事




「お疲れ様です!」


フィールドを抜けた部員達が、ベンチへと戻ってくる。
各々にドリンクとタオルを渡して、お疲れ様、と一人ずつに声を掛けていく。



「お疲れ様、守君」
「サンキュー、なまえ!」
「みょうじさん、ドリンクちょーだい!」
「あ、俺もー」
「はい、どうぞ。松野くんの、と…半田くんの」
「ありがとー!」
「ありがとう」
「みょうじ!お、俺にもくれ」
「はーい、どうぞ、染岡くん」
「お、おうっ、ありがとな!」



新しく入ったマネージャーだからか、私にドリンクを頼む子が多くて、合間にも皆が話しかけてくれた。
ううん、なんか照れちゃうなあ。
本来なら会う事すらも有り得ない筈の皆と、こんなに喋ることが出来るなんて、思ってもみなかったもの。

そんな風に考えながら、余ったドリンクを手に取る。
もう皆に渡したかな、と見回すと、しゃがんで靴紐を直している風丸君に目が留まった。
あれ、風丸君、タオル持ってないのかな?
…わ、渡しに行った方がいいかな…でも、は、恥ずかしいな…
ドリンクを持ったり置いたり、タオルを広げたり畳んだりと怪しい動作でぐだぐだ悩んでいると、いつの間にか目の前まで来ていた風丸君に声を掛けられていた。



「みょうじ、ドリンクまだあるか?」
「えっ!あ、はい、どうぞっ」




慌ててドリンクとタオルを渡すと、風丸君はありがとう、と、にこりと笑った。
やばいかっこいいイケメン度半端無い!
今まで見た男の子の中で一番かっこいいです。
まさか、二次元至上主義の私が、生身の男の子にこんなにときめく日が来るとは思わなかった。
いや、私からすれば、元々は二次元の人なんだけど。





「マネージャー、やってみてどう?」
「あ、うん、楽しいよ、すごく!」

「そうか、良かった」



にこりと笑う彼は、本当に天使のような笑顔だった。
ああ私今なら安らかに死ねそう。
この笑顔があればどんな死に様でも安らかに死ねそう。
そんな意味の解らない事を考えながら、休憩時間一杯、風丸君とお話をした。