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かきくトリオとお出掛けします。






「国見、金田一、おまたせ」

「そんな待ってねーよ」

「なまえ、今日の格好はいつも通りなんだ」

「うん、アンタ達ならもういいかなって思って」

「……及川さんに見つかったらヤベーな…」

「まあ、今日は大丈夫だろ」

「?なんかあったの?」

「別に」

「そう?ならいいけど。それにしても、この面子で出掛けるの、ほんと久し振りよね」

「お、おう」

「そうだな」

「……」

「…何、アンタ達、まだギクシャクしてる訳?吹っ切れたんじゃなかったの?」

「…いや…」

「あー、まあ…なあ」

「ていうか、なんで吹っ切れたと思ったわけ?」

「え、だって、影山が仲直りしてたって、翔陽が…」

「日向ボゲェ…!」

「もしかして、仲直りしてないの?」

「……」

「……」

「……」

「嘘でしょ、やだもう呆れるわ本当…なら、この機会に腹割って話しなさいよ。それで仲直り。いいわね?」

「…お、おう」

「…な、仲直りっつっても…」

「……」

「せめて普通に話せるようになってくれないと、誘った私が馬鹿みたいじゃないの」

「……」

「……」

「……」

「……っあーもう!アンタ達が引き摺ったままなら、私も掘り返すわよ」

「は?掘り返すって…?」

「あのね。私はあの頃ね、アンタ達や、あのチームが、怖かった」

「は、」

「え…?」

「…!」

「影山は一人突っ走ってるし、金田一と国見は影山の文句ばっかりだし、他の部員も皆ギスギスして、部の空気悪くて…どうにかしたくても、影山は他の奴らが下手だからとか、他の奴らは影山が身勝手だからとかばかりで、私の話なんて聞いてくれないし。さすがにあの時は正直泣いたわ」

「ぐっ…」

「そ、それは…」

「……」

「皆がバラバラになってくのがありありと分かって、すごく怖かった。私の声なんか誰にも届かないんだって思った。だから、諦めちゃったの」

「諦めた…?」

「そう。諦めたの。つまり、チームを見捨てたのよ、私は」

「見捨てたって…別に、んな事ねえだろ」

「なまえは最後までマネージャーやってくれてたじゃねーか!」

「それでも私は、悪い方向に向かうのを止めようとしなかった。皆を見捨てた事には変わり無いわ」

「そんな事…」

「もし私が諦めてなければ、あの状況を打開できたかもしれない。なのに私は見て見ぬふりをする事を選んだ。だから、あれは私のせいでもあるのよ」

「なまえのせいじゃねえよ!」

「ううん、私のせい。今までずっと後悔してたの。私、皆の事が好きだった、仲間でいたかった、友達でいたかった。なのに、自分の気持ちも皆も裏切るような事して、皆の傷を深めた。だから、ごめんなさい。マネージャーなのに、何も出来なくて、ごめんなさい」

「……」

「なまえ…」

「……なんでお前が謝るの?」

「だって、私は…」

「何も出来なかった?何言ってんの?お前がいたから、俺はずっとあのチームでバレーしてたんだ。辛くても限界まであの場所に居続けたのは、なまえがそこにいたからだよ」

「え…?」

「影山にはついていけないって、辞めた奴もいた。俺も辞めてやろうかと思った事もあるよ。けど、なまえがバレー部にいたから、限界まで頑張れたんだ」

「そ、そうだぞ!俺だって、なまえがずっとマネージャーやってくれてたから、三年間頑張れたんだ!そりゃ、情けない最後にしちまったけど…それをなまえのせいだなんて言うつもりねーし、なまえがマネージャーで良かったと思ってる!」

「国見、金田一…」

「お…俺、も……、俺だって…なまえに謝られなきゃいけねーことなんかねーよ。つーか謝んなきゃいけねーのは、俺の方だしな」

「か、影山まで…」

「だから、なまえ。もう一度やり直そうよ。今度はチームじゃないけど、また友達として、やり直そう」

「そうだな!今度は、前よりもっと仲良くなれる、気がする!な、影山!」

「えっ、お、おう…俺も、入ってんのか?」

「あ、当たり前だろ!」










かきくトリオが仲直りしました。


「ふふ…じゃあ、これで全員元通り、ね!」
「おう」
「ちょっと強引な気もするけどな…」
「いいんじゃないの、別に」
「それじゃ、仲直りしたところで、ご飯行きましょうか」
「おう。で、どこ行くんだ?」
「焼き肉バイキング」
「肉?珍しいな」
「だって国見が、デザートいっぱいあるっていうから」
「結局甘いもん目当てか」
「なまえと国見に任せるとだいたいそうなるよな」
「まあ良いじゃない。焼き肉好きでしょ?」
「好きだけども」
「取り敢えず早く行こう。土曜の昼時だから混んでるだろうし」
「おう」
「そうだな」
「ん……あ、ねえ、帰りで良いから、ホームセンター付き合ってくれない?」
「別にいいけど」
「ホームセンターで何買うんだ?」
「鍵」
「は?」
「部屋とクローゼットに、鍵付けるのよ」
「あっ…」
「察した」
「?」

言わずもがなの兄貴対策。