a fair woman in male attire

一条唯(主人公)夢
男装夢主









「好きだよ、唯…」
「なまえ…」



色気を含んだ声で、なまえが囁く。
俺を見上げる瞳は僅かに潤んでいて、どきりと心臓が鳴った。
近過ぎる距離に身体中が熱を持つけれど、壁に押し付けられた背中だけが冷たい。
掴まれた両手首には力が入らなくて、なまえの手に収められたまま。
段々と近付いてくる扇情的な唇に、ただ目をきゅっと細めた。













「……図書室でそういうの、やめてくれない?」
「うわっ、と」
「へ…?」




言葉と共に、ぐい、と、突然なまえの体が離れる。
なまえと同時に見上げてみると、呆れた顔の修次がなまえの襟を掴んでいた。





「修次…?」
「図書室に居るって言うから来てみれば、何やってるんだよなまえ」
「唯が可愛いから、つい。…っていうか、邪魔すんなよ修次ー!」




折角良い感じだったのにー、と残念そうな声色とは裏腹に、なまえの表情は悪戯な笑みを保ったままだ。
修次は小さく溜め息を吐くと、なまえの襟から手を離した。



「全く、油断も隙もない…唯も、男相手に顔赤くするなよ」
「えっ…う、うん…」
「甘いな修次!男相手じゃなくて、俺相手だから唯は照れちゃうんだよなー?」
「えっ!?」
「なまえ、冗談はそれくらいにしておいてね」
「修次ひどい!」



大袈裟な泣き真似をするなまえを無視して、修次が帰るぞ、と背を向ける。
彼に倣って歩き出すと、不意になまえが俺の右手を握った。









「…続きはまた今度、ね?」
「っ…!!」



囁かれた其れに、瞬時に身体中が熱くなる。
勢い良く振り返ってなまえの顔を見ると、ぱちりと可愛らしくウインクをされた。






「"私"、唯の事、本当に好きよ」




耳元で小さく、しかし大きく聞こえたなまえの声に、俺は心臓の鼓動を抑える事が出来なかった。















a fair woman in male attire






("男"相手ならきっと何ともないのに)
("彼"の言動に惑わされてしまうのは)
("彼"が"女"であるとしっているから)

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a fair woman in male attire=男装の麗人