まるばつ計画!










「なあ、ナマエ」
「ん?」


朝食の後、食器を片付けようと立ち上がったところに、エレンがやってきた。
アニとミーナに先に行っててと促して、持ち上げた皿を置き直す。
いつもエレンの側に居るミカサやアルミンも、どうやら先に食堂を出たようだった。




「どうしたの、エレン?」
「ちょっと、訊きたい事があるんだけど」
「なぁに?」



エレンが私に訊きたい事なんて、珍しい。
座学ならアルミンに訊けばいいし、実技訓練はミカサやライナー達が居る。
恐らく訓練以外の事だろうけど、わざわざ私に訊きに来るなんて、何の話だろう?
疑問を感じながらも私に頼ってくれるのが嬉しくて、特に何も突っ込まずにエレンの問いを待った。









「あのさ…子供って、どうやって作るんだ?」
「………………はい?」




自分の耳を疑った。
すぐ後ろでライナーが盛大に吹き出してたけど、流石にそれはないだろうと思ってエレンに聞き返す。



「…ええと、エレン?多分私聞き間違えたと思うから、もう一度言って貰っていい?」
「ああ。だからな、子供ってどうやって作るんだ?」
「…聞き違いじゃなかった…」


ライナーの笑い声を背に、顔を熱くして項垂れる私。
その横では、エレンが何も理解してない顔で首を傾げていた。




「今朝皆で話してる時に、昔ミカサに訊かれた事、思い出してさ。アルミンに聞いたけど教えてくれなかった」
「アルミン…」


男の子同士なんだから教えてあげてよ…完全にとばっちりだよ私。




「で、ライナーに聞いたら、男と女でする事だから、ナマエに聞いてみろって…」



前言撤回。
ごめんアルミン、君からじゃないわ。
もっと核心的な奴が居たわ。
エレンの言葉にぴたりと止んだ笑い声の方へ顔を向けると、背を向けたまま微動だにしなくなったライナー。
お前のせいかあとで覚えてろよ。
その向こうに座るベルトルトに、こいつどうにかしとけと目配せすると、苦笑いを返された。






「なあ、ナマエは知ってるんだろ?」
「えっ、いや、私は…」


こ、子作りの方法だなんて、そんなの私には言えない…!
本気でライナーを恨みながら、どうやって誤魔化そうかと必死に考える。
ライナーめ、あとでアニに言い付けてやるんだから!




「…あっ、そうだ、ほら!女の子だったら、ミカサに聞いたらいいんじゃないかな!」
「ミカサも教えてくれなかったんだよ。…それにさ」



エレンの大きな両手の平に、がしっと右手を掴まれる。
そして、少し顔を近付けて、真っ直ぐに私を見詰めて、







「俺は、ナマエとの子供が欲しいんだ」
「え…っ!」










思わずライナーを殴り飛ばして食堂から逃げ出した。














まるばつ計画!





(ナマエ、なんで逃げるんだよ!)
(ううううるさい!エレンにはまだ早い!)



(不覚にもきゅんときたじゃんかこの天然たらし!)