幸せはレモン味






「ギャリー、何食べてるの?」


本を読んでいるギャリーの口元が不自然に動いているのをみて、私はやっていたゲームを置いて訊ねた。




「飴よ飴。レモンキャンディー」
「いいなー、私にも頂戴」
「はいはい、ちょっと待ってて」


手をぱたぱたさせてねだると、ギャリーは脇に畳んであるコートのポケットを漁った。




「あらー?無いわね…」
「もう無いの?」
「ごめんなさいね、コレで最後だったみたい」
「えー」


ぱちん、と手を合わせて謝るギャリー。
まあ無くなったんなら仕方無いか、と思ってゲームに向き直ろうとした時、ふと閃いた。






「そうだ、何かお菓子でも作りましょうか。直ぐに食べれるモノだと…ホットケーキとかで良いかしら」


同時に閃いたらしく立ち上がってキッチンに向かおうとする彼を呼び止める。
私も立ち上がり、ギャリーの側へ寄って、服の裾を掴んで、引き寄せて。












ちゅ。






「…え?」



ギャリーの可愛らしい声が漏れる。
吃驚して私の肩を掴んだギャリーはお構い無しに、唇を抉じ開け舌を押し込んだ。



「ふ、っ…んん、」


突然の行為に強張るギャリー。
いつもなら自分からしてくるのに、驚いちゃって、可愛い。
なのに、口内に残るレモンキャンディに邪魔されながらも、一生懸命舌を絡めてくる。
それがまた可愛い。



「んぅ…は、なまえ…っ」



潤んだ目を細め、甘えた声で名前を呼ぶその表情は、余りにも卑猥だ。
我慢できなくなる前に唇を離すと、唾液が糸を引いて、直ぐに途切れた。
ギャリーの舌が名残惜しそうに唇から覗いているのがやけにエロい。



「はぁ…っなまえ、なに、」
「ギャリーのくちびる、おいしい」
「…っな、」
「あ、ちょっと違うかな。このキャンディー、おいしいね」


きょとんとしているギャリーに、唇の隙間から、キスした際に頂いたレモンキャンディーを見せた。





「……あ」
「ギャリーの飴ちゃん、もーらい」



途端、更に顔を真っ赤にして、なまえ!!と叫ぶギャリー。
爆発しそうなくらい、耳まで赤い。
照れてる照れてる、可愛いな。
満足気に笑いながら首に腕を絡めると、ギャリーは溜め息を付いて、そっぽを向いた。



「何すんのよ、バカ」
「バカじゃないもん」



キャンディも欲しかったんだけど、キスしたかったんだもん。
そう言うと、ギャリーは私の腰に腕を回して、真っ赤な顔で唇にキスを落とした。


















幸せはレモン味



(これ、返そうか?口移しで)
(……ほんと、バカね)