please forgive





真夜中の、真っ暗な部屋。
不気味な程、静かな闇が広がる。
その静寂を破らぬように、そっとベッドから降りた。
音を立てずに行動するのは、仕事柄慣れている。

両足を床に着けて腰をあげると、ベッドへ向き直る。
先程まで自分が横たわっていた場所の隣には、ベッドの沈みに寄り添うように眠る、一人の女。

年よりも幼く見える顔立ちに、それに似合わず豊満に実った肢体。
暑いのだろうか、身を捩ってタオルケットを押し退けると、薄い服を纏った其れが露になった。
僅かに顔を歪めて、んん、と唸った後、小さな寝息が心地好いテンポで聞こえる。



「…なまえ、」

そっと、髪を梳くように撫でる。
手の平を動かす度に、月明りに光る黒髪が揺れる。
…それはあまりにも綺麗で、神聖とも言えた。
この汚れた手で触れてはいけない気がして、そっと髪を落とす。
流れた黒が、白いシーツに映えた。

神秘的…な艶かしさに疼く欲を、彼女から目を逸らす事で抑える。






「………さて、」




そろそろ、準備をしようか。



聞こえない声で呟いて、ベッドから離れた。
音を立てない様に気を付けながら、机の引き出しを開ける。
一番奥まで手を突っ込んで取り出したのは、黒い、相棒。


その体に、カチャリ、と、銃弾を込める。
……これも、大分手慣れたものだ。
弾を全て込めると、其れを服に忍ばせた。

もう一度、ベッドの縁へ歩み寄る。
気持ち良さそうに眠る彼女に布団を掛け直し、柔らかな頬に口付けた。


…ちょっと、行ってくる。
小さく呟いて、部屋を出ようと立ち上がる。
なまえが起きないように、なまえに気付かれないように、静かに玄関の鍵を開けた。




















「行ってらっしゃい」








小さい、しかしはっきりとした、彼女の声が聞こえた。

振り向くと、先程と変わらない姿で横たわるなまえ。
閉じた瞳に、月明かりがきらりと光った気がした。










 please forgive

(お前は、汚れた俺を赦してくれるのだろうか)