嘘吐きの言葉。
「『愛してる』」
唇が、動く。
「『愛してる、なまえ』」
彼の細い腕が、私の体を、ぎゅう、と抱き締めた。
「『大事な、僕のなまえ』」
優しく、けれど、激しく。
「『壊してしまいたいくらい、愛してるよ』」
囁くのは、嘘吐きの声。
大嘘憑きの…"オールフィクション"の、言葉。
それでも、私は、
「『愛してるよ』」
偽りの事実でも、構わない。
「『嘘じゃないよ』」
抱かれた腕に力が篭る。
…大嘘吐きめ。
そう思いながらも呟くのは、少しだけでも、夢を見ていたいから。
「わたしも、愛してる」
嘘でも良いの。
真実は、期待できないから。
「…あいしてるよ、なまえ」
同じように、愛を囁く貴方を、抱き締め返した。
嘘憑きの言葉。
(その言葉の真意を)
(わたしは知らない)