おそろいフィーリング



快晴の日曜日。
現在時刻は9時18分。
待ち合わせ時間は、10時丁度。







「…早すぎた」




まさかこんなに早く着いちゃうとは。
いや、確かに、家を出る時間も早かったんだけどさ。
確か家出たときは8時半くらいだった気が。
………。
一時間以上早いな。
家から公園まで30分掛からないのに。
それでも、かなりゆっくりとろとろ歩いたつもりなのに。

うう、楽しみすぎて早起きしちゃったとはいえ、待ちきれなかったとはいえ…子供か、私は。
初めてのデートで40分も早く着くとか、気合い入れすぎだと思われたらどうしよう。
引かれないかなあ。
ジンくんって、恋愛事とかにはあんまり興味無さそうだし。
お、重たいとか、思われたらどうしよ…






「なまえ」
「え?」




不意に後ろから聞こえた、聞き慣れた声。
まさかと思いつつ振り返ると、件のジンくんがそこに居た。




「えっ、ジンくん…?」
「おはよう」
「あ、おはよう…じゃなくて、なんで居るの?待ち合わせ、10時じゃなかったっけ?」
「ああ。そういうなまえこそ、早いね」
「う…私は、別に…ジンくん、だって…」




なんとか誤魔化そうと、もごもご口籠る私を見て、ジンくんはくすりと笑った。
ああ、普段はあんなに格好良いのに、笑顔は可愛いなあ。
…じゃなくて。
ジンくんに笑われた!




「う、何よ…笑わないでよぅ」
「すまない、なまえが可愛いから、つい」
「…え」





なんか今凄いタラシ的発言が飛び出たような…
戸惑う私を見詰めて、相変わらずにこにこ微笑んでいるジンくん。
普段皆で居るときは見せないような、柔らかい笑顔。
私の前だけで見せてくれる表情が堪らない…って、いや、違う違う。
また浸ってしまった。





「僕は、なまえに早く会いたかったから…一時間程早く着いてしまって」
「…え、」
「恥ずかしい話、いつもより早く目が覚めてしまって…予定の時間まで、待ちきれなかった、というか」




え、待ちきれなかった、って…もしかして、ジンくんも私と同じだった、ってこと?
呆ける私に、ジンくんが、トドメの一言。






「つまりはね、今日のデートが、凄く楽しみだったんだ」
「……っ…!!」






もうだめ、ノックアウト。
少し照れたように笑うジンくんは、刃を持たぬ凶器と化した。
ぁああやばい顔熱い、どうしよう、嬉しくて爆発しちゃいそう!




「じ、ジンくんが、そんな事言ってくれる、なんて…」
「?……なまえは、違った?」
「ぅえ?」
「なまえは、楽しみじゃなかったかい?」
「…!」





そんな言い方…ずるい。
恥ずかしいのに、言わなきゃいけなくなるじゃない…








「…楽しみだったよ、すごく」
「良かった」



にこりと笑ったジンくんは、行こうか、と私の手を取って歩き出した。

















おそろいフィーリング











「早く来て正解だったよ。こんなに早くなまえと会えたんだから」
「…私が時間まで来なかったら、その間どうするつもりだったの?」
「ああ…特に考えてなかったよ」
「えぇ?何それww」
「だって、なまえも早く来てくれると思ってたから」
「……!」






この天然タラシめ!
(でもそこも好き!)