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「何か飲む? 奢るよ」

「え、いらないです。喉渇いてないので」

「あ、そう。ところで自動販売機ってさあ、見てるとシズちゃんを思い出して嫌な気分になるよね」

「そんなこと言ったら標識もガードレールもゴミ箱も、器物は全部見てて嫌になっちゃうじゃないですか」

「まあね、そうなんだけど。俺、別に無機物には愛を注いでないし、そこはどうでもいいよ。……で、何飲むの?」

「だからいらないですって」

「まあまあ、折角奢るって言ってるんだから」

「えー……じゃあ、普通のお茶でいいです。普通の」

「はいはいお茶ねーっと…あ、手が滑った」

「明らかにわざとじゃないですか!」

「あはは、まあいいじゃないか。奢って貰っておいて文句は言える立場じゃないよ」

「え、何ですかそのジャイアニズム。いいって言ったのに無理矢理奢るようなこと言ってきたの臨也さんじゃないですか」

「別に君だって何でもいいと思ってる癖に。変に被害者ぶるのも良くないよ」

「失礼な」

「はい、厚意は素直に受け取るように」

(面倒くさい。果てしなく面倒くさい)

「あ……」

「ん? どうしたの?」

「コーラララ……」

「コーラ嫌い?」

「あ、いえ。私の世界ではコーラララって商品は無いので」

「コーラ自体が? それともそれが?」

「これが、です。コーラ自体はありますよ」

「ふうん」

「でもこれって向こうの世界には存在しない商品だから、私が飲んでも大丈夫なのかなあ……」

「それは何が何でも試してみないとね。さあ飲もう。今すぐ飲もう!!」

「わあー……急にはしゃぎ始めた……」

「あ、でも待てよ。念のため、色々生命保険とかそういうのに登録しておいた方がいいかもしれない。もちろん受取人は俺で」

「何昼間から寝言を言ってるんですか」

「やだな、冗談に決まってるだろ? 戸籍すらない君が生命保険に入れるわけ無いってことくらい分かっているし」

「ああ、もう。戸籍があったら決行していたって言ってるようなもんじゃないですか。折原さん最低ですよ」

「誉めてくれてありがとう」

「もういいです。それよりこれ、開けて下さい。今脱力して力入りません」

「君の甘え方ってちょっと変わってるよね。貸して」

「はい」

カシュッ

ブッシューーー

「…………」

「……ぷっ」

「あっははは! 折原さん引っかかったー。あんまり馬鹿にしないで下さいよ? これくらいの仕返しなら私だってしますから!」

「やってくれるね……」

「はい、このハンカチ使って下さい。じゃあ私、もう行きますので。では!」

「……逃げた」

(本当に飽きない子だ。俺もこれくらいの罠に引っかかるなんてどうかしてる)

(とりあえず、お返しは三倍返しだからな)

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原作では地名、商品名は実名で出てくるのに、うっかりアニメ仕様のネタで書いてしまったのでお蔵入りに。他にも東京ハンズシズちゃん編とか書こうと思ったのだけれど、その事実に気づいて書くのを止めたので、臨也さんしかありません。




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