呟 |
小話その5、分岐2。 「牡牛座のお客様ー」 「はい、俺です」 「あ、私もです」 「へえ、君も牡牛座なんだ?」 「私は臨也さんが牡牛座という事実に驚きですよ」 「水瓶座のお客様ー」 「はい。……なんでノミ蟲の星座に驚いてんだ?」 「牡牛座の世間的なイメージを言っているんじゃない?」 「はい。よく占いとかで“のんびり屋”とか“温厚”って聞きますから……」 「ああ……なるほどな」 「……確かに臨也の生き方とはかけ離れているな」 「臨也さんって良くも悪くも即行動、ってイメージが私の中でついているので、のんびりタイプと言われてもピンと来ないんですよね」 「のんびりはともかく、俺かなり温厚な方じゃない?」 「温厚な人間は街中でナイフを振り回したりしねえんだよ」 「まったくだな」 「えー」 (正論過ぎてフォロー出来ない……) 「じゃあ彼女は? 君だって結構やらかすよねえ?」 「うっ……」 (矛先がこっちに!) 「……いや、こいつは牡牛座っぽいだろ。ぽやぽやしてるっつーか」 「そうか? そうでもないだろ、こいつは。かなりドジではあるが」 (結構ズバズバ言うなあ……) 「あれ? シズちゃんとドタチンの意見が割れたね。ついでに言えば俺ももう少し違う印象を君に持っているんだけど」 「……私は私の事をどう思われているかは気にしません。普通の枠から外れていなければいいですから」 「まあ、それもそうか」 「大事なのは他人の評価じゃないな、確かに」 「じゃあ今はそれで納得しておいてあげるよ」 「ところで牡牛座のパフェって色々乗ってるのな」 「あ、そうですね。白玉やどら焼きまで乗ってますし……あ、このムース抹茶だ」 「ソースもチョコじゃなくて黒蜜みたいだし、全体的に和風テイストで作られているね」 「へえ、和風パフェ……」 「何、シズちゃん物欲しそうな目で見て。あげないよ?」 「いらねえよ。馬鹿だろ手前」 「え、でもこの白玉なんて結構美味しいですよ? じゃあ門田さんいりますか?」 「ん? なら貰っておくかな」 「はい、どうぞー」 「……」 「やっぱり静雄さんもいります?」 「え、あ……」 「いらないよねえ? さっきいらないって言っていたもんねえ、シズちゃん?」 「うっ……」 「臨也、やめとけ」 「何で? いるなら欲しいって言い直せばいいだけじゃないか」 「静雄さん、やっぱり食べますか? 別に後から言い直すことは恥ずかしい事ではないですから」 「まあ、食いたかったらそう言っちまった方が後悔はないな、確かに」 「……」 「それ、食いてえ……」 「じゃあ……」 「はいどーぞ、シズちゃん!」 「モゴッ!」 「し、静雄さんっ!」 「臨也お前……!」 「あ、大丈夫。スプーンはシズちゃんのを拝借しました。別に俺のパフェの白玉でもいいでしょ? 親切心であげたんだよ?」 「そういう問題じゃないだろ!」 「い、臨也手前……!」 「何? もう一個欲しいの? 我が儘だなあ」 「ちげえよ!!」 「……えーと?」 「……あんま気にすんな。互いの意地がぶつかってるだけだから」 「はあ……」 (彼女の物は白玉一つだってシズちゃんにやるもんか) (あいつから貰える筈の白玉が……くそっ!) 「あ。門田さん、もう一個いります?」 「……いや、遠慮しとく」 どれだけ門田さんを優遇したいのだ、私は。…正直臨也さんとシズちゃんが揃うと、他に誰が一緒であろうとニ人はニ人の世界に没頭してしまうと思うんですよね…あ、BL云々じゃないですよ。あくまで仲が悪いのがデフォだと思っているのでBLとかでなく、純粋に嫌いあっているというか…夢主の存在も忘れるほどに相手を殺したくて仕方ないのが理想です。でも最終的に、出会ってしまったら相手しか考えられなかった矢印が、いつの間にか夢主に向かっていて優先順位が変わっている…というところまでいくと、いよいよあの長編も終わるに向かうんじゃないかなと思います。臨也さんもシズちゃんも相手がいなければの条件付ですけれどね(笑) |