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迷うことなくリビングに進んでソファーにぐだっと座った幼なじみ――哀光を横目に姉が用意してくれた冷めた朝食の目玉焼きと今焼いたばかりのトーストを頬張る。
自分の紅茶を淹れるついでに、哀光のぶんも淹れてやった。
「...で?今日は何しに来たんだよ」
コトリ、哀光の前にいい香りの湯気のたったカップと角砂糖の器とミルクを置く。
ちなみにこいつはミルクティーしか飲まない。
「え?特に何も?暇だったから」
「……」
角砂糖をぽちゃんぽちゃんと大量投入しながら平然と答えた。極めつけに大量のミルクを注いで撹拌している。
(……さよなら俺の日曜日…)
せっかくのだらだらする予定を台無しにされたが、まぁいい。本来なら追い出しているところだけど、ここは俺が大人になろう。
甘ったるいであろうミルクティーを一口飲んでカップを置いたとき、哀光の指に何か光っているのに気づいた。
「……あれ。哀光、アクセサリーなんかしてたっけ?」
装飾品の類いはあまり好まないはずだから、驚いてしまった。哀光とはかなり長い付き合いになるのに、指輪なんてしているのを見るのは初めてだ。
「ん?あぁ、これ?朝起きたらいつの間にか指にはまってたんだよねー」
どこかで聞いたような話だ。たしか、今日の、朝…
…そんな馬鹿な。同じ、なんて。
「…おい。ちょっとその指輪見せろ」
「?いいけど…」
哀光から指輪を手渡された瞬間、確かな確信が生まれた。
自分のネックレスチェーンを外して並べてみる。
2つの指輪の違いといえば白い部分と黒い部分が対照なこと、そして何か紋章のような部分に彫られたレリーフが微妙に違うこと位のものだ
"偶然"
そう言い切るにはあまりにも精巧で
明らかな故意がなければこんなものは造れないだろう
俺ですらそう言い切れるほどに、細部までほぼ同じ作りのリング。
そしておそらく、夢の中で俺が誰かと交換していたものだ。
「どうしたの?そんな神妙な顔で…?…その指輪、湊斗の?」
能天気な哀光も俺の手の中の2つのリングをみて流石に目を丸くした。
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