笑って笑って



ふわり、甘いにおいが鼻をくすぐる。落ち着けと思うのに心はそわそわしてつい体も一緒に揺れる。おかしいな、魔物と対峙してる時はちゃんと自分の意思で落ちつけるのに。心が言う事を聞いてくれない。



「やっぱりじっとしてるのは退屈?」
「そ、そんなことないよ」

トレーの上にケーキとポットを乗せて名無が歩いてきた。甘いにおいがさっきよりも近くにある。音をたてないようにトレーをテーブルの上に乗せた名無は僕の目の前にケーキを置いた。赤いイチゴがちょこんとクリームの上に座っている。

「正直に言っていいよ。男の子なんだし」
「ううん。退屈じゃないのはホント」

ただ、緊張しちゃって。ちょっと恥ずかしくって頬をかくと名無は笑いながら僕の頭を撫でた。む、なんか子供扱いされてる。ちょっと唇を尖らせれば名無は手を離したがまだ笑ったままだ。なんでだろう、カカリコ村でもゲルドの砦でも僕を子供扱いする人はいるけれど名無に子供扱いされるのだけは凄く嫌だ。もっと対等に見てほしい、って思う。

「ほら、ケーキ食べて食べて。今お茶もいれるから」
「うん。いただきます」

僕の目の前に座った名無はかわいいカップにお茶を注いでケーキの傍に置いた。ケーキ用のフォークは少し小さくてなんだか手に違和感を覚える。名無の方をみると名無の手にはそのフォークがぴったり似合っていて自分と名無の違いを変なところで感じてしまった。



「おいしいよ、名無」
「ホント?ありがとう」

そういうと本当に嬉しそうに笑うから僕も照れる。人の笑った顔ってみんな素敵だけど名無の笑顔は特に好き。見た目じゃなくて、もっと違うなにかで胸があったかくなる。
こういうのが、きっと幸せっていうのかもしれない。


「僕、名無のケーキ好きなんだ」
おいしいし、名無と一緒にいるのは楽しいし、何より名無の笑顔が嬉しい。
名無の方を見ると名無は優しく笑って僕と視線を合わせる。やっぱり好きだなその顔。
だが、次に名無が紡いだ言葉はやっと落ち着きかけた僕の心をかき乱した。


「私も、リンクのこと好きだよ」

「なっ…ぼ、僕だって名無のこと、大好きだよ!」

突然の名無の発言に心臓が大きな音を立て、一気に熱が顔に集中してしまいつい大声まであげてしまった。それに恥ずかしくなって体が固まるが熱の回った頭ではこの後どう動いたらいいかもわからない。ただ口を結び名無を見つめているだけ。片手にフォークも持ったままだ。

名無はと言えばちょっとだけ僕の声にびっくりした後照れくさそうに笑った。


「…うん。私も大好き」


口の端にクリームついてる。と名無の指が伸びてきてそれを拭う。
カップの中の赤茶色に映った色では確認できないけれどきっと名無も僕も顔は赤かった。



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庵さま
一周年企画のご参加ありがとうございますー!

ゆるーくほのぼの、ということでしたが、ゆ、ゆる…ゆるくない気が、あ、あれ?なんか甘い気しかしな、い…あ、あれ、あれれーおかしいなあー(…)いや、私の中ではゆるいです。こんなの甘の範囲に入りません(……)多分夢主はゆるゆるなんですが勇者ががっついてしまったすみませんんんんん。

優しい文章なんて言われちゃうと照れちゃいますね(笑)大好きなんて恥ずかしいけれどとても嬉しいです。私の小説をそんな風に受け止めてくれる庵さまが私も大好きです。あと時空の勇者布教が成功して1人ガッツポーズしてます(笑)ふへへもっと時空勇者を求めればいい(笑)

こんな拙い文章ですがこれからも試行錯誤しながら書いていきます。それを庵さまに待っててもらえたらとっても嬉しいです。ぜひこれからもご贔屓に!
一周年企画のご参加ありがとうございました!





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