ご一緒にどうぞ。


天気がいいから牧場まで遊びに行こうと思った。自分の分のお昼ご飯と、先日もらった果物をもって外に出る。よく晴れた日だ。空の青はまるで絵のように見える。しかし、マフラーを揺らす風は冷たくすぐに現実に引き戻された。

最近は霜が降りていることの多い道も今日はすっかり日の光で溶けている。代わりに少し土が湿っていた。まだ牧場は見えない。あまり遠くないはずの牧場が遠く感じるのは何故だろう。家で待っている時はそんなこと思わないのに、いざ行こうと思ったら早くリンクに会いたくなった。背中に受ける日の温かさを感じながら牧場までの道を早足で歩く。

「あれ、名無。どうしたの?」
「天気がいいから、一緒にご飯食べようと思って」
「あはは、ピクニック気分?」

今、ちょうどファドいないんだ。そういってリンクは私の手を引く。少し多めに果物持ってきたのに残念だな、なんて考えながら私は泥だらけのリンクの手をみた。大きい男の人の手。いつみても大きくて安心する。ぎゅっと握り返すと、リンクは優しく笑った。あ、この顔、すき。


山羊の鳴き声を聞きながら私達はお昼ご飯を食べる。手を洗うのに触れた水は冷たく真っ赤になってしまったのだけれどタオルでふいた後にまた繋いだリンクの手は温かくてすぐに元通りになった。なんでリンクの手は温かいんだろう。私よりずっと動いていたから?それでも同じ水を使ったのに。なんだかずるい。大きな口で卵焼きを咥えたリンクは眉間に皺を寄せている私を不思議そうな顔で見ていた。太陽の光が金色に反射して、眩しい。

「寒い?」
「そんなことないよ」
「でも、眉間にシワよってる」
ぺたり、私の頬にふれたリンクの手のひらはまた温かかった。少しだけその手のひらにすり寄ってみる。するとリンクは一度手を離して巻き込んでいた髪をどかしてからもう一度私の頬に手を添えた。しかし聞き手の左手にはまだ箸が握られている。気にしないで食べていていいのに。

「ちょっと考え事してた」
「へぇ、どんなこと?」
「リンクのこと」

ふぅん。と大してリアクションも取らず箸を咥える。お行儀が悪いからお弁当見て食べてもらえないかな。というか、私が食べづらい。頬に手を当てられた状態では口を動かすのが恥ずかしいんだ。眼界の端に映るテーブルに雀が小さな声をもらしながら止まる。髪を揺らす風は冷たいけれどリンクの触れている頬だけが温かかった。

「俺はいつも名無のこと考えてるのに」

名無はこういう時しか俺の事考えてないんだ。そう続けるリンクに私は目をぱちくりとさせる。しかし少しだけ拗ねたような顔をするリンクが可愛くて笑うと頬に当てられた手が私をつねった。いひゃい、なんて言ってみるが実際は別に痛くはなく、どちらかといえばくすぐったい。
ぱっと離れた手と一緒にリンクの視線もお弁当の方へと戻る。さっきまでそれを望んでいたはずなのにいざ離れてみるとなんだか寂しい感じがした。

「拗ねた?」
金色をかきわけて今度は私がリンクの頬をつねる。私より硬い頬が引っ張られてリンクは箸を置いた。先程と変わらない目つき―ちょっとジト目―で私をみると私の腕を掴みそのまま手首にかじりつく。2、3回甘噛みして少し赤く跡のついた手首をぺろりと舐めた。その動作になんだか恥ずかしくなって腕を引くがリンクの強い力で掴まれてるからどうにも動かない。耳と頬に熱が集まってくる感じがする。

「ちょ、」
「今、食べてんだから邪魔すんな」
「最初にしてきたのはリンクじゃない」
「俺はいいの」

理不尽。そんな言葉は音にならず私が飲み込んだ。かぷり、もう一度噛みつくリンクに思わず私の箸がこぼれおちる。テーブルの上に転がる私の箸。リンクもちらりとそちらへ視線はくれたが気にする様子はなく、もう一度噛んでから私の腕を離した。心臓が変に音を立てている。まるで心臓が大きくなったような気分だ。耳をすりぬける山羊の鳴き声がやけに響いた。


「天気がよくなくても、来てよ」
ご飯を口へ運ぶリンクはまるで何ともないかのように言葉を吐く。高くなった太陽は一層リンクの髪を照らすから眩しくて少しだけ視線をずらした。ずらした視線の先でなにやら袋をもったファドが見える。そういえばどこへ出ていたのだろうか。

「…考えておく」
そんなことをいいつつもおそらく一週間は確実にくるだろうという事は私にも、多分リンクにもわかっていた。


------------
お待たせいたしました!
一周年企画にご参加ありがとうございました。
リンクのほのぼのということでしたがいかがでしたでしょうか?勝手に光の勇者にしてしまいましたが不都合ありませんでしたかね…?
最初の方はなかなかほのぼのだったと思うんですよ!天気のいい日に一緒にお昼ご飯!ほのぼの!しかし光の勇者は発情期だった!←

大変長らくお待たせしてしまい本当に申し訳ございませんでした。
こんなサイトですがこれからもご贔屓いただけたら嬉しい限りです。たまにでいいので覗いてみてください。

それでは、一周年企画のご参加ありがとうございました!




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -