気づいてハニー



窓の外も真っ暗になり、夕食も済ませたころ。部屋で本を読んでいた私をいきなり冷たい風が襲った。
バッと開いた窓の方を見ると銀色が暗闇の中から出てくる。服は背景に溶け込むように真っ黒で強調された銀色の髪と赤い目。その赤と目があった。


「よぉ」
「よぉ、じゃない。いつも玄関から入りなさいって言ってるでしょう」
「こっちの方が近いだろ」
「近い遠いの問題じゃない」
「それに玄関からだと玄関の前で待たされる。寒い」
「待ってたことなんかないくせに!」


私の文句なんてどこ吹く風というようにヤツは体を全部部屋に入れ私の隣に座る。ぼふんと勢いよくソファが跳ねた。
彼の纏う冷たい空気を感じ私は体を離す。

時折、彼は私の家に現れては食料を減らして帰って行った。どこに住んでいるのかは知らないけどハイリア湖付近で何度か目撃したことがある。彼の家の確かな場所はわからないとしてもあの付近だとしたらここにくるのは到底めんどくさいと思うのだがわざわざご飯の為だけに来ているのだろうか。
確かに細い体ではあるけれどとても食いっぱぐれているような体型にはみえない。


「なにじろじろみてるんだ」
「別に…。あと私はもう夕飯をすませました」
「じゃあつくれ」
「お断りします」

途端によるダークの眉間。
なんで断ったらそんな不愉快そうな顔をするんだ。私は食事係でも召し使いでもないのに。

そんなことを考えているとダークの腕が延びてきて私の手をグッと掴まれる。そのまま私の持っていた本はテーブルに放り投げられた。本を追ってテーブルに目をやろうとしたがそれより早くダークの顔が間近に迫ってくる。
な、なによ、ご飯作らなかったからって私が文句言われる筋合いは…


「名無はメシをつくるのがイヤか?」
「は?」
「だって普通はオンナがつくるんだろう」
「それは、まあそうだけど…?でもそれって結婚してたりする人たちの話じゃない」
「でも名無とオレはケッコンしてるだろ」
「……え?」


え?
私の耳をすり抜けたダークの言葉はただ音となるだけで意味は理解できなかった。私とダークが結婚?いつの間にそんなことをしたんだ。


「忘れたのかよ」
「忘れるような出来事が思い当たらない」
「お前からいってきたんだろ」
「う、嘘だッ!」


ダークと結婚、それも私からプロポーズだなんてそんな事いった覚えもないし言ったとしてもそんな一大事忘れるハズもない!
そうは思っても何かあるんじゃないかと必死に記憶を辿る。ハイリア湖に遊びにいったとき、一緒に迷いの森に木の実をとりにいったとき、城下町の買い物を手伝って貰ったとき。だが慌てているのもあり記憶が入り乱れ余計に混乱するだけだった。

思考も追い付かず目を白黒とさせる私を不思議に思ったのかダークは少し眉間にシワを寄せ首をかしげる。


「ちゃんと名無から言っただろ。付き合えって」
「そんなことっ…、ん?付き合え?」
「思い出したか?」


ダークの言葉で脳裏によぎるあくる日の情景。そういえば前に大きい買い物をするのにたまたまウチにきていたダークを連れ出した、よ、う、な…。

どうだ、とでもいうようにしたり顔をしているダークの顔を睨み付ける。確かに、確かに付き合えとはいったけど!



「付き合うの意味が違う!」
「人間は付き合うと結婚するんだろ」
「うん、まぁ…全部間違ってる訳じゃないんだけど、うーん…」


なんて説明したらいいんだろう。大体どっからそんなあやふやな知識を仕入れてきたんだ。

誤解だとわかり落ち着いてきた頭でどう伝えるべきか考えていると掴まれていた手を引かれダークと視線を合わせられる。彼の眉間にはまだ少ししわがよっていた。


「だから、名無がメシを作るのは当然だろ?」
「いや、だから、付き合うっていうのには色々意味があって…。それに付き合ってすぐに結婚する訳じゃないし、手を繋いだり、キスしたり段階があるのよ」
「ふーん…」


多分というか絶対ダークは結婚の意味を理解していない。ちょうどいい召し使いが出来る程度にしか考えてないだろう。
だが私の話にダークは、訝しげだが少し考えるような表情をみせる。これは案外誤解を解くのは早いかも知れない。


「名無」


しかし、それは甘い考えだったようで、ダークの片手が私の頬に触れたかと思うとその距離が一瞬でつまる。
本日二度目の脳内ホワイトアウト。

それは唇が重なっただけなのに随分荒々しくお互いの鼻がぶつかった。


「これでいいのか?」
「な、な、な、」

ぺろりと唇を舐めるダークはなんの疑問も持っていない顔をしている。そんな顔が余計に私を混乱させた。

「何して…!」
「お前がしろって言ったんじゃねーか」
「しろとは言ってない!」



思わず大声をあげたがダークはさらりと涼しい顔をしている。
私は顔に熱が集中して耳まで熱いし心臓はばくばくと音を立ててうるさいのに。
なんでいつもコイツとは話が噛み合わないんだ!


「なんでもいいから早くメシ作れよ」
「うるさい!」


ダークに腕を引かれ強制的にキッチンにたたされた私はなんだかんだと文句をいいつつ冷蔵庫を開けるのだった。






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神谷さま、
一周年企画ご参加ありがとうございました!

遅くなりすみませんんんん!
ホントにすみません…すみません…。
書き終わってみると天然というよりただのアホな子みたいですね。それでも何様オレ様なダークリンク様なので色々暴走?迷走?しています。

結婚の意味がわからなくてもきっとニュアンスは間違ってない。けど夢主は気づいてない。多分そんな感じ。

この度はリクエスト頂きありがとうございました。こんなだめだめなヤツですがどうぞ今後もご贔屓に!

一周年企画ご参加ありがとうございました!






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