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▼ やっぱり、こっちみて



「名無ー、ちょっときてー」

椅子に座って本を読んでいると頭上からリンクの声が降ってきた。梯子を上ってみればベッドに体を向けているリンクの姿。その背中から向こう側を覗いてみた。


「ねぇ、名無。コレ…」
「………リンク、頑張れ」
「はあ!?」


日の光がめいっぱい差し込むリンクのベッドの上。そこにどこから入り込んだのか白い猫が丸まっていた。

セーラさん家の猫とはまた違うみたいだから恐らくただの野良。今はまだいいけれど、夜にはそこに(リンクが)寝るわけで。猫の毛だらけになって寝るのは彼も嫌なのだろう。自分が狼になっていた事なんて棚上げだ。

しかし、私には自分のベッドがありますし、何よりあんな心地良さそうな顔して寝ているにゃんこを放り出すのは気が引ける。自分の事は自分でねーなんていいながら梯子を降りようとすると片手がクンっと引っ張られた。

「ねぇ、名無」
「なに。飼わないよ」
「ペットは名無だけで充分だよ」
「ちょっと目の前の窓から下を覗いてみなよ」
「冗談だってば。そうじゃなくてさ、」


可愛いって思うでしょ?
そういってリンクは綺麗に笑って首を傾げた。あぁ、可愛いよ。お前の笑顔が。そんな事は到底言えもせず、私は猫の体をそっと撫でた。

「うん。可愛い」

ふわり、風に動かされる毛並が気持ち良さそう。それを追うように再び猫の上に置いた手を動かしその温もりに私は目を細めた。穏やかに眠る猫は優しい表情のまま。ふわり、また風が揺れると私の手の上にリンクの手のひらが重なった。

「リンク?」


その手を動かさずにリンクの方を向くとゆっくり近づく彼の顔。少しカサついた唇が私に触れた。いきなり、なんだ。ちょっと気を抜いてしまったのを見逃されず、手を引かれ勢いよくベッドに沈む。

音をたてて跳ねたシーツに猫が吃驚して、窓から逃げ出した。


「ね、俺の事も撫でてみて」
「いきなり何言ってんの」
「いいから。おねがい」

お前はガキか。と思いつつ目の前の金色をゆっくりと撫でる。するとリンクが先程の猫みたいに穏やかに笑うからなんだかどきどきした。おかしいな、猫を見たときはただ可愛いと思っただけなのに。未だ笑うリンクにつられて私も笑った。




「これさっき野良猫を撫でた手だよ」
「名無はもっと空気を読みなよ」





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