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▼ ラブチート



※学パロ/ちょっとお茶らけ気味ダークさん





今日も今日とて始まる奮闘記。
「…はよ」
「おはよー」
自分の席で、バックの中をごそごそとしている女に声をかけて席に着く。俺が声をかける奴なんて他にいないのにこいつはおそらくなんにも思っていない。もう声をかけるのをやめようかと頭をよぎった「今日は早いね」…なんて、嘘に決まってんだろ。こっち向いて笑うからそれでも別にいいか、なんて思ってしまう自分は嫌になるくらい単純すぎる。アイツがどっか向いてしまう前にポケットに手に入れて小さな塊を取り出した。
「ほらよ」
不器用に差し出すと細い指と手のひらが近づく。コロンと揺れる飴玉に女は笑った。
「ありがとう。好きなの、コレ」知ってる。この前盗み聞きした。だからそれにしたんだっつーの。わずかに触れた指先が熱を持つ。

授業中、外を見るふりをしながらアイツをチラリ見る。こっち見ろ―、とか見なくてもいいからこっち向けよ、なんて念じてるとふいに変な方向から声を掛けられて我に返った。「問3、答えてみろ」「…21」「正解だ。でも変なこと考えてるのもほどほどにしとけよ」考えてねーよ。思いっきり眉を寄せてみたが教師は黒板に向き直ってるし、アイツもこちらを見たりはしなかった。…ちくしょう。

昼休みは大体購買に行く。それも混雑最高潮の時に。でも、するりするり抜けていくから3分もかからずに帰ってくる。だから俺はそれに合わせて購買に向かった。アイツが人ごみから抜ける少し手前、人ごみより一歩手前で立ち止ると案の定、人の塊から抜けて気を緩めたアイツとぶつかる。
「あっ、ごめ…」
「…わりぃ」
見上げてくるコイツの目に俺が映り、動悸が増した。すぐにアイツは俺の横をすり抜けていったが振りむくと同じように振り返ったあっちと目が合う。ちょっとだけ、機嫌が良くなった。

午後の体育は男女ともにサッカーだった。走ったときに揺れる髪が誘惑しているようで掴みたくなる。俺がボールを取りにいくとカラーコーンを取りに来たアイツと鉢合わせした。「男子もサッカー?」「…おう」「頑張ってね」笑顔が眩しくて、なんてガラじゃないから石灰につまずいたふりをして目の前の女を巻き込み転ぶ。すっかり背中を地面につけた訳じゃなく、尻もち程度だが俺と女の距離はなくなった。
「わ、悪い…!」
もったいねーけどすぐ立ち上がって手の埃をはらう。そのまますぐに手を差し伸べると女は素直に俺の手に自分のそれを重ねた。眉根を寄せている俺に大丈夫だよ、と女は呟く。
「んふふ、でもなんか意外だ」
カラーコーンをもったアイツは、少し自分の埃を掃いながら体育倉庫をでた。体育着、白いのに汚しちまった。裾のほうに付いた茶色を見て罪悪感が湧く。つい、出来心で、なんて。
「もっと、完璧な人なのかと思ってた」
女は何故か照れくさそうに笑う。その時のアイツは今までとは違う笑顔のような気がした。どきどきと心臓が耳元で音を立てる。くそ、また、これかよ。
ずるいことばっかだけど、お前の気が引けるなら、別にいいだろ?





タイトルは電波で有名な方より






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