zzz | ナノ


▼ 姫様と騎士と勇者


※黄昏の姫様と女騎士
※タイトルに勇者とか入ってるけど勇者出てません。(重要)



「こんにちは、名無」

城下町の見回りに出るため渡り廊下を歩いていると庭先から声をかけられる。声の方へと視線を向けると自分の使える姫様がいらっしゃった。こんなところで一体どうしたのか。

「こんにちは、姫様。お散歩ですか?」
「えぇ、ちょっと気分転換に。ダメだったかしら?」
「いいえ。しかし、姫様。誰かにちゃんと言ってきましたか?」

私の言葉を聞くと姫様はくすくすと笑って誤魔化す。また無断で出てきたのですか。私の溜息を聞いて姫様はまた笑う。もう何度も言っているのに全然聞いて下さらない。

「いい加減、一国の姫であることをもっと重く考えて下さい」
「でも名無がいるじゃない」
「私がいなかったらどうするつもりですか。ちょうどこれから城下町に出るところだったんですよ」
「あら、いいわね。私も連れていって下さらない?」
「姫様!」

冗談よ。なんて笑いながら姫様は私の手を握った。すらりとした綺麗な指。手袋の上からもそれが良くわかる。それに少しだけ力を入れると姫様の手の力もぎゅっと強くなった。すぐにでも城下町に出るつもりだったが少し時間をずらそう。これではまた他のやつらに姫様に甘いと怒られてしまうが致し方ない。私を惑わす姫様が悪いんだ。

「姫様、お散歩もいいですが誰かの目が届くところではないと危険です。私がご一緒してもよろしいですか?」
「もちろん」

姫様は握ったままの私の手を引くと庭を歩きだす。ふわりふわりと揺れる髪がもどかしい。こんなにも揺らいでいたらうっかり目を離したすきに姫様はどこかへ消えてしまいそうだ。姫様がすぐに私に声をかけてくださって良かった。姫様がいなくなってしまったら、この国は、民は、私は…。


「ねぇ、名無。私行きたいところがあるの」
「城下町はダメですよ」
「あら、なぜ?いいじゃない。名無もこれから行くところだったんでしょう?」

せっかくそれに合わせてきたんだから。そう笑う姫様に私はまた溜息をひとつ。わかっていて抜け出してきたのか…。本当におてんばで困ったものだ。

「私は仕事で行くんです。姫様の警護と見回りを一緒には出来ません。裏路地だって見るんですから」
「警護なんていうのは嫌よ。名無と城下町デートがしたいの」
「姫様ッ…!」

ふふ、と笑う姫様に連れられていつの間にか城の門まで来る。これではすっかり彼女の願いを承諾したも同然だ。あぁ…、本当に私は姫様に甘い。甘やかすばかりではいけないとちゃんと分かっているというのに。

「ねぇ、名無。私、酒屋にいるという自警団に会ってみたいわ」
「ですから裏路地には連れて行きませんと言っているでしょう」
「何事も勉強よ。国の主が国の事で知らないことなんてあってはいけないと思うの」
「でしたら城へ呼べばいいでしょう。私が伝えておきますよ」
「そんなの相手に悪いわ。やっぱり連れて行ってちょうだい」
「…仕方ありませんね」
「ふふ。名無、あとスタアゲームもやりたいの」
「姫様!…先日行きましたでしょう」
「また行きたいの。そこでまた名無の勇姿がみたいわ」
「日が暮れる前には帰りますよ」
「まだお昼じゃない。名無は本当に優しいわね」
「姫様だけですよ」

小さな子供のように繋いだ手を揺らす姫様が愛おしく感じた。




おかしい。勇者夢になるはずだったのにそんな雰囲気が微塵もない。
(つまりシリーズものになる予定)






[ ▲ ]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -