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▼ 鏡越メルヘン



※シャドウリンク


闇の鏡を見ることはオレの日課だ。
街のこと、アイツらのこと、他の魔物のこと、あらゆるものが見える。もちろんこの鏡の間のことも。

最近変わったことがある。名無がこの鏡をじっとみているのだ。
鏡の前に立っているのだろう。鏡は名無の姿をまっすぐに映し、その視線は鏡を通してオレとぶつかる。
特に何をする訳でもなくずっと鏡を見つめている名無。まるで鏡越しに自分を見られているような錯覚に陥った。

前に一度名無に直接聞いたことがある。「鏡の前で何をしているんだ」と。しかしアイツはまともな返事をせず、特になにも、とはぐらかした。
なにもないハズはないのにあまり突っ込んで聞くのもまるでオレがアイツを気にしているようで気に食わなく、オレもそのまま引き下がった。

…あぁ、くそ。こんなに気になるんだったらやっぱりもっと聞いておきゃよかった。いや、気になってなんかいない。気になってなんかは、いない。ただ、こう毎日毎日鏡を見ているアイツの行動を…そう、不審に思っているだけだ。別にアイツのことを気にしている訳じゃない。

ぐるぐると渦巻く感情をよそに今日も鏡はいろんなものを映してゆく。
街の様子、洞窟の魔物、遠くの湖、…4バカ。アイツらまだあんなところで遊んでやがんのか。色違いの服を着てぎゃんぎゃんと騒がしくじゃれあっている。アイツら毎日おんなじことしかしてねぇんじゃねーか。あまりにもアホらしくて溜息がもれた。

そこである考えが頭に浮かぶ。
もしかして名無はコイツらを見ていたのか?
名無も同じ炎の塔に住まう魔物。目的も…オレと同じに作られた。つまりコイツらを見ている可能性だって充分にある。そう思うとなんだか無性にイライラしてきた。
別にアイツらのことなんて名無が気にすることじゃない。名無は大人しく4バカが来るのを待って入ればいいんだ。

むしゃくしゃしたまま鏡を見つめる。
すると今日も名無の姿が鏡に映し出された。いつもと同じようにまっすぐ鏡を見つめている。

その眼はオレの予想のようにアイツらをみているのだろうか。それにしては表情が全く崩れない。ただ何もうつらない鏡を見ているだけのようだった。一体、なにを

そこまで考えたところで名無に変化が起きた。いつもなら鏡を見つめたあとは静かに立ち去るのに今日は鏡の方へ歩いてくる。オレもそれに倣うように鏡の方へと足を進めていた。

ぺたりと鏡に手をつける名無。もの憂い気にその眼がゆっくりと伏せられそれと一緒に顔がだんだんと近づいてくる。

オレも名無の手のひらに自分の手を重ね同じように距離を詰めた。手の熱が鏡に奪われる。

ひんやりとした温度が唇に触れた。






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