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▼ まんまとのせられた



※今⇔昔を行き来するはずが今⇔未来を行き来してます。
※純粋に間違えた。




男の子が空から降ってきた。

「うわあああ!!」
「きゃあああ!!」
私の上に見事着陸した男の子は少し頭をくらくらと回していたがすぐに正気を取り戻して私と視線をかち合わせる。早くどいてほしい。私は背中と腕と彼の乗っているお腹が痛い。


「わわわ、ごめんなさい!」

慌てて彼は私の上から退き私に手を差し伸べる。私はそれを掴んで立ちあがった。

「大丈夫?けがはない?」
見たところ私と同い年くらい。金色の髪に緑色の帽子をかぶった彼はすっごく心配そうな顔をして私の顔を覗き込んだ。

「大丈夫。ねぇ、それよりアナタはなんで空から降ってきたの?もしかしてお空の国の人?」

昔、本で読んだ天空の国の人なのだろうか。でも天空の人はもっと小さくて、羽があってって書いてあったのだけれどもしかして天空には私と同じような人間もいるのだろうか。

「ううん。僕は普通の人間だよ」
私の期待はあっさりと砕かれた。なーんだ。でもどうして空から降ってきたんだろう。


「ちょっと、いろいろあって…」

眉と眉の間に皺を寄せた彼は困ったように頭をかく。あんまり聞かない方がいいのだろうか。
まだ気になったのだけれど追求するのはやめて、彼の青い目を見つめた。


「いきなりぶつかっちゃってごめんね。まさか上に落ちるつもりじゃなかったんだけど…僕、急いでたんだ」
「あっ…」
そういって彼は走っていく。あっちは妖精の森だけど、迷子になっちゃわないかな。
ふと、足元を見ると白いハンカチが落ちていた。彼のものだろうか。隅っこの刺繍が解れかけている。
追おうにも、もう彼の姿はなかった。でも彼は普通の人だって言ったからきっとこの国の人よね。
刺繍好きの私がこの解れを見逃すわけにもいかず、私はハンカチをポケットにしまって家に帰った。


そして自分のペンダントを無くしてしまったのに気づいたのはその日の夜のことだった。







「こんにちは」
「はい、ってあれ?」
手芸屋のお店のドアを開け入ってきたのはもう随分と昔、空から落ちてきた男の子だった。それも私が大人になったのにあの時同い年くらいだった彼は当時のままの姿だ。もしかして、あのあと、妖精の森で妖精さんにされたんじゃ…!

「…残念だけど僕は普通の人間のままだよ」
「えっ、じゃあ、どうして…」
「うーん。それは秘密。それよりさ、はいこれ!」

ポケットから出てきた彼の手のひらの上には昔、私がなくしたペンダントが乗っていた。なくしたと気づいた次の日、すぐにまた彼とぶつかった場所へ行ってみたのだが全く見当たらなく落胆したのを覚えている。とても気に入っていただけにショックも大きかった。


「わ、これ、どこで…」
「猫が拾ったみたいなんだ。お姉さんそのペンダント気に入ってたんでしょ?村の人に聞いたらすぐ持ち主がわかったよ」

といっても僕が見つけたのも最近なんだけど。ちょっとだけ恥ずかしそうに少年は頬をかく。まさかこんな何年もたってから再開するとは思わなかった。


「本当にありがとう!」
「どういたしまして。あと、僕のハンカチ知らない?」
昔落としちゃったんだ。そう続ける彼に私は先程と一転。少しばかり冷や汗をかいた。しかしせっかくペンダントを届けてくれた恩人にこのままやり過ごすのも悪く、正直に店の奥からハンカチを持ってくる。


「わぁ…すごい!」
「ご、ごめんなさい!あの、解れたところを直そうとしただけなの。でも時間が経つにつれて気になってあれこれ付け足しちゃって…!」

拾った時は右下に刺繍があるだけだったがいつの間にかその刺繍からいろいろ伸びいつの間にか全体にまで広がってしまっていた。もうまるっきり違うハンカチである。


「い、今違うハンカチを持ってくる、から!少し時間をもらえればあの時と同じ刺繍を…」
「ううん。いいんだ。僕はこの刺繍が欲しかったから」
「へ?」
くるりと目を動かすと彼は可笑しそうに笑った。しかし特に理由を話すそぶりは見せず彼はくるりと背中を見せた。


「じゃあね。お姉さん。刺繍ありがとう!」
お店のドアを開けると眩しい笑顔で外へと駆けだしていく。え、あ、名前ぐらい聞いておけば…!

「ねぇ、キミ!」
まだお店からそう離れていないところにいた男の子は立ち止って私の方へと振り返る。日の光が反射して眩しい。


「あ…。えと、よかったらまた来て!今度はお菓子とかいっぱい作っておくから!」
焦った声で叫ぶと少年は大きく笑ってまた走り出す。…名前はまた今度でいいや。
少年の姿が見えなくなったところで店に戻ると少しだけ耳鳴りがした。日光にやられたかな。あれ、なんで私、外に出ていたんだろう。

カラン、と音がして店のドアが開いた。


「ただいま」
「あ、おかえりなさい。今日は早いのね、リンク」






補足:
・女の子は未来で手芸屋さんになりました。
・勇者わらしべ中。
・わらしべを終えたリンクは“今”に戻って言われた通り会いに行った模様。
・「お菓子作って待っててくれるって言ったじゃん」
・ゲームは今⇔昔を行き来します。間違えて今⇔未来を行き来させたのはミス(大事なことなので(ry)








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