zzz | ナノ


▼ 彼は勇者




ある秋の日のことだった。でもその秋は夏の次に来るものではなく、つい先日まで花が咲き誇る春の次に来たものだった。この国は、おかしい。四季がめちゃくちゃに乱れ、入れ替わっている。一体なぜこんなことが起きているのか。私には見当もつかなかったし、教えてくれる人もいなかった。私は湖の近くの切り株に座って紅葉を眺めているとある少年に出会った。

「あの…、いきなり悪いんだけど、そこを僕に譲ってくれない?」

金色の髪に緑色の服。私と同じように尖った耳が髪から覗いていた。「え?あ、あぁ…」彼の意図はわからなかったけれど、私がここを譲りたくない理由がある訳でもないし、咄嗟のことだったのもあり特に質問もせず私は腰を上げた。

「どうぞ」
そういうと彼は「ありがとう」と笑ってそこに立つ。手には見たこともないロッドが握られていた。

「えいっ!」

そして彼がロッドを振る。するとたちまち周りの景色が姿を変え始めた。先程まで赤や黄色に彩られていた木々が青々と色を変え、地面に草が生え、蔦が伸びる。あっという間に変わってしまった季節に私は目を丸くし、口を開けて呆けている。

「え…?」
「はは、ごめんね。びっくりさせちゃったよね」
少し、申し訳なさそうに眉を寄せて彼は笑った。もしかして、最近四季がおかしいのはこの人のせいなの…?そんな考えが顔に出たのか彼は慌てたように弁解する。
「ち、違うよ!四季が乱れてるのは僕のせいじゃないよ!」
「え、違うの!?で、でも今、」
「…確かに今、四季を変えたけれどこれは本来の僕が持ってた力じゃない。僕は四季を取り戻してるんだ」

彼は切なげな目でロッドを撫でた。にわかに信じられない話だし、嘘をついているかもしれないのに私はすっかりそれを信じ込んでしまった。それはきっと、彼の表情がとても悲しそうで、とても…。

「ねぇ、あなた名前は?」
「僕?」
私が聞くと彼はロッドから視線を外し、私に移す。金色の髪がふわふわと揺れた。
「僕の名前はリンク」
笑顔が添えられたそれを私の脳が反芻する。リンク、リンク、リンク。頭の中で繰り返していただけなのに、口に出てたいたようで目の前のリンクが笑った。

「覚えてくれるの?」
「…うん。だって、リンクは四季を取り戻してくれてるんでしょ?」
「…ありがとう」

そういって彼はまた切なげに笑った。なんでこの人はこんなにも切ない表情をするのだろう。リンクは「じゃあね」と手を振ると夏になり伸びたツタを上って洞窟に入って行った。
「リンク、」

頑張って、なんて言えなかった。






よくわからないお話。木の実の勇者と出会うお話が書きたかった。








[ ▲ ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -